第97回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 25 職場における合理的配慮について:現状と課題解決の糸口

2024年5月25日(土) 16:00 〜 18:00 第4会場 (広島国際会議場 B2F ダリア2)

座長: 江口 尚(産業医科大学産業生態科学研究所産業精神保健学研究室), 長谷川 珠子(福島大学行政政策学類)

 障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる「共生社会」の理念の下、すべての事業者には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある(障害者雇用促進法43条1項)。雇用義務制度の対象となるのは、原則として手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)を有している労働者である(障害者雇用促進法37条2項)。一方で、障害のある労働者への雇用における合理的配慮の提供義務を規定した障害者雇用促進法2条1号には、障害者の定義として、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。) その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と記されており、手帳の所持についての規定はない。我が国の障害のある労働者に対する合理的配慮の提供についての議論は、手帳を所持する者に限定する傾向があるために、手帳を所持しないために、得られるはずの必要な配慮が受けられない労働者が多くいる。本来、職場における合理的配慮は、手帳の有無にかかわらず働く上で困難を抱えている障害のある労働者すべてに対して提供されるべきものであると考える。そこで、本シンポジウムでは合理的配慮の提供の対象となる労働者を手帳の所持に限定せずに議論を進めたい。| 第1席は弁護士の小島健一氏から、合理的配慮をめぐる「対話」の意義についてお話をいただき、事業者側に対する“誠実対話義務”という考え方をご紹介いただく。第2席は大企業で産業保健看護職として障害者雇用を支援する堀本綾氏に、合理的配慮の実務について、具体例を交えてご紹介をいただく。堀本氏にも、面談の意義や人事労務部門との連携の重要性についてお話をいただく。第3席は、中小企業での障害者雇用に対して社会保険労務士の立場から支援を行っている角振摩利子氏に、中小企業における合理的配慮の提供の実務についてその課題や、他職種との連携の必要性、また外部リソースの活用についてお話をいただく。第4席は、産業医として企業の合理的配慮の提供の支援に積極的に関与している辻洋志氏に、合理的配慮の分野で先行する米国での支援をヒントにした、産業医、産業保健看護職が実践の場で使用しやすい支援のステップおよびポイント、現在のわが国の障害者雇用の中で産業医の専門性が活かせる場面についてご紹介をいただく。第5席は、岩本友規氏に、当事者として合理的配慮を受ける側の視点から見えて来る当事者目線の課題についてお話をいただく。| 当日は、以上の多様な立場からの職場における合理的配慮の講演をもとに、参加者の皆さんとの議論を通じて、その現状と課題さらにはその解決の糸口を探っていきたい。