第97回日本産業衛生学会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム 1 多様化する社会で第14次労働災害防止計画にどう対応するか

2024年5月23日(木) 09:00 〜 11:00 第2会場 (広島国際会議場 B1F ヒマワリ)

座長: 豊澤 康男(東京都市大学 総合研究所), 北村 修(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 サイエンスソリューション部)

  厚生労働省は、「第14次労働災害防止計画」(以下、「14次防」という。)を、令和5年3月に公示した。これまでの労働災害防止計画と異なり、この14次防では、アウトカム指標とアウトプット指標を明確に示している。| アウトカム指標は、労働災害を減少させるという最終目標(死亡災害を5%以上減少させる。死傷災害の増加傾向に歯止めをかけ2027年までに減少に転ずるなど)であり、アウトプット指標はその最終目標を達成するための具体的な目標である。| 労働災害防止計画は1958年に始り、労働災害や職業性疾病の防止に取り組む国、事業者、労働者等が協働して安全衛生活動を推進する際の実施事項や目標等を示して取組を促進してきた。これらにより我が国の安全衛生水準は大幅に向上した。| しかしながら、いまだ日本における労働災害(死亡災害)の発生割合は、英国やEU諸国と比べて数倍と言われている。また、日本では、最近になって自主管理型の安全衛生対策が普及しているが、英国では約50年前の1974年の安全衛生法の制定当時から自主的な管理が進められている。世界の中で労働安全衛生レベルをマラソンで例えるならば、日本は上位にはいるが、トップ集団ではなく、第2、第3集団に位置していると言える。日本は、トップ集団に追いつき追い越すための行動を計画的に進める必要がある。| 企業の安全衛生担当者からよく聞くのが、「14次防がわかりづらい。」という声である。14次防では、事業者や国等の取組みが主に記載されている。大企業にとっては対応可能な目標も、中小規模事業場では、全ての目標に網羅的に対応することは難しい現実がある。| そのため、日本産業衛生学会などの学会、業界団体や労働組合などが、それぞれの実態に合うように目標をブレークダウンして、中小規模事業場等をサポートしていくことが必要と思われる。本シンポジウムのような機会を通じて、この14次防を他人事とせず、「どう対応するか」を自分の問題として捉えるムーブメントがより活性化することを願う。| 本シンポジウムでは、①14次防を取りまとめた厚生労働省安全衛生部計画課課長補佐の武部氏に本計画の目指すものやポイント、更には検証の仕組みなどを話していただき、②筑波大学の貴志准教授からは、特に災害が多い中小規模事業者のインセンティブのあり方などについて、③化成品工業会の上村氏からは、化学物質の自律的管理等への対応について会員への支援における実態、課題、今後の対応について、④労働安全衛生総合研究所の研究推進・国際センター長の島田氏からは、中小規模事業場が安全衛生に取組む望ましい姿勢等について、⑤筑波大学准教授で産業医の経験もある堀氏からは、高齢者、女性、外国人などの多様な労働者の労働衛生に14次防を踏まえてどのように対応するかなどについて、それぞれの立場から話題を提供していただき、議論を深めていきたい。|