第97回日本産業衛生学会

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シンポジウム

シンポジウム 27 医師の働き方改革における長時間労働医師への健康確保措置 -改訂版マニュアルの概要と面接指導の実際-

2024年5月25日(土) 13:40 〜 15:10 第5会場 (広島国際会議場 B2F コスモス1)

座長: 谷川 武(順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座), 堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学)

2016「医師の勤務実態調査」では病院勤務医の約4割がいわゆる過労死ラインである超過勤務年間960時間を、約10%が1860時間を超えているという実態が明らかになった。これを削減するべく、医師の働き方改革が進められた結果、2022年の調査では、超過勤務が年間960時間を超える医師は21%、1860時間以上の医師は3.6%で、2018年の調査より改善されている。しかし、この間にも、研修医の過労死事件が生じており、医師の勤務状況の改善と健康管理体制の構築は未だ喫緊の課題である。|改正労基法及び医療法が2024年4月より施行されることにより、長時間労働医師に対する追加的健康確保措置の実施が義務づけられた。追加的健康確保措置の面接指導を適切に実施するために、今般、面接指導実施マニュアルの改訂が行なわれた。また、面接指導を実施する医師が面接指導中に参照しやすい「面接指導の進め方クイックガイド」もとりまとめられた。厚生労働省により面接指導実施医師養成講習(e-learning)が行なわれ、2023年11月現在、総勢約8,000人が受講するなど、着々と面接指導実施体制が整えられている。この中でも、追加的健康確保措置に際しての産業保健職は重要な役割を担うことが想定されている。今般のシンポジウムでは、会員の追加的健康確保措置に対する理解を深めることを目的として、マニュアル編集者らで面接指導体制の整備や実施に関するポイントをまとめ、要点や今後の方向性について議論を行なう。|順天堂大学医学部公衆衛生学講座植田結人先生には長時間労働医師への健康管理の要点について、医療安全・睡眠の観点からまとめていただき、北里大学医学部公衆衛生学単位の堤明純先生には長時間労働が健康に及ぼす影響と改訂版マニュアルの活用について、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)やうつ病の簡便な構造化面接法(Brief Structured Interview for Depression: BSID)も踏まえてご案内いただく。産業医科大学 産業生態科学研究所堀江正知先生には、?時間労働医師への健康確保措置について、面接指導の概要を説明いただく。東北大学環境・安全推進センター黒澤一先生には医療法に基づく追加的健康確保措置の制度以前より取り組んで来た労働安全衛生法における長時間労働をする労働者に対する医師の面接指導制度の実践や、面接指導実施医師と産業医との連携等について言及いただく。最後に、前・厚生労働省医政局医事課医師等医療従事者働き方改革推進室藤川葵先生には、行政の立場から医師の働き方改革の推進についてご発言いただく。| 本シンポジウムを通じて、改めて医師の働き方改革と長時間勤務医師に対する追加的健康確保の概要と、面接指導の実際および産業医がどのように連携すべきか等について、知見や示唆を得る一助となれば幸いである。|