長谷川 航平1 (1.信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム 4 隣接領域(環境保健)から学ぶ化学物質のリスク評価
2024年5月23日(木) 10:10 〜 12:10 第5会場 (広島国際会議場 B2F コスモス1)
座長: 上島 通浩(名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学分野), 武林 亨(慶応大学医学部衛生学公衆衛生学)
共催:許容濃度等に関する委員会
わが国の化学物質取り扱い職場における労働衛生管理は、3管理の考え方を軸に行われているが、それらは職業性中毒とその予防に関するこれまでの知見の蓄積に基づいている。疾患ベースでの中毒に関する知見の蓄積のスピードは、職業性中毒の発生が半世紀前に比べ著しく少なくなっていることを反映し、緩やかになっている。実際、許容濃度をはじめとする職場における参照値・管理目標値等の設定に利用されるエビデンスには、二昔以上前のものが多い。| ところで、個別規制の対象外化学物質による労働災害の発生という、古くて新しい問題の解決を目指して導入された「化学物質の自律的管理」は、これまで積極的な管理の視点が少なかった物質や、既存の法規制が明確に念頭においていない作業での曝露にも光を当てるようになった。そして、知見の蓄積の少ない労働現場においても適切と考えられる管理を行うために、現場の実務担当者に提供されるリスク評価のためのツールや考え方の全てにおいて、科学的根拠の確からしさが高いレベルで担保されているとは限らないことも浮き彫りにした。従来の特殊健康診断の対象外の物質や、低用量複合曝露下でのリスク評価の考え方をはじめ、今後の研究の発展が待たれるテーマは多い。| 一方、視点を産業現場から少し離して化学物質のリスク評価研究を眺めてみると、隣接領域である環境保健における発展が特に今世紀に入ってから著しいことに気付く。疫学研究が数多く実施されるようになり、また、リスク評価手法の大きな進歩がみられる。こうした知見蓄積の状況は、産業保健領域においてもヒントや参考になるはずである。| そこで産業現場における化学物質のリスク評価研究の今後を考えるために、環境保健領域における研究や化学物質のリスク評価手法の現状を学ぶ本シンポジウムを企画した。信州大学の長谷川航平先生には、環境省事業である出生コホート研究「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」における、妊娠中の血中有機フッ素化合物と生まれた児の健康状態についての解析結果を、紹介していただく。北海道大学のアイツバマイゆふ先生には、化学物質の複合曝露影響評価法について、やはり出生コホート研究である北海道スタディにおける実例や最近の研究動向を報告していただく。座長でもある上島からは、環境保健領域では化学物質への国民の曝露評価を、国レベルの生物学的モニタリング(バイオモニタリング)により行う時代に入っている現状を紹介する。信州大学の野見山哲生先生には、国際がん研究機関(IARC)による発がん性が疑われる物質・要因の評価プロセスや、発がん性分類の最近の考え方についてお話しいただく。そして、時間が許す限り総合討論の時間を設け、産業保健領域においてこれから求められる研究について、意見交換を行いたい。
アイツバマイ ゆふ1、岸 玲子1 (1.北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
上島 通浩1 (1.名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学)
野見山 哲生1 (1.信州大学医学部衛生学公衆衛生学)