第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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[ML-06] 高齢口腔がん患者の治療方針の決定において考慮すべきことは?

〇山田 慎一1、栗田 浩1 (1.信州大学 医学部 歯科口腔外科学教室)

【略歴】
2000年  長崎大学歯学部歯学科卒業
2000年  長崎大学大学院歯学研究科入学
2004年  長崎大学大学院歯学研究科修了 
2004年  長崎大学医学部・歯学部附属病院 助手
2004年 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 助手
2009年  長崎大学病院 口腔顎顔面外科室 講師
2011年  カロリンスカ研究所(スウェーデン))分子細胞生物学講座 
2015年  信州大学医学部附属病院 特殊歯科・口腔外科 准教授

【資格】
日本口腔外科学会 口腔外科専門医・指導医
日本口腔腫瘍学会 口腔がん専門医・指導医
日本口腔科学会 認定医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医(歯科口腔外科)・指導責任者
日本有病者歯科医療学会 認定医・専門医
日本口腔診断学会 認定医
日本口腔ケア学会 4級
インフェクションコントロールドクター

【受賞歴】
2014年 第32回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会 優秀ポスター賞
2016年 日本口腔腫瘍学会賞
2017年 第35回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会 優秀ポスター賞
我が国は超高齢社会に突入しており, 高齢口腔癌患者は増加している. 高齢口腔癌患者の治療に際しては, 高齢者特有の予備力の低下, 併存疾患の存在などの身体的, 生物学的, 生理的, 精神的な問題に加えて社会的問題についても考慮する必要があり, 口腔癌治療において治療方針の決定などの対応に難渋することも少なくない. 老化の過程は一般に一様でなく,高齢者の評価を年齢だけに基づいて行うことは困難である. また, 高齢者においては、生存率だけでなく, 残された時間や生活の質を考慮した治療方針の決定に寄与する治療アウトカムや全身評価ツールの確立が必要である. NCCNガイドラインでは高齢癌患者の治療方針決定に際しては, まず癌そのものがその患者の余命を短縮するか否かについて評価し, 次いで意思決定能力の有無を確認し, その後に癌治療が患者の目的に沿っているのかを検討するような手順が推奨されている. 加えて,癌治療に対する患者の忍容性について危惧がある場合には,高齢者総合機能評価を行うとされている. しかしながら, このような現状があるにも関わらず, 本邦における高齢口腔がん患者の治療の指針となるガイドラインは存在しない.

 生命予後および病的状態を考慮に入れた総合的健康指標として健康余命・自立期間があり, 後期高齢口腔癌患者において検討を行ったところ, 加齢とともに自立期間は短縮し, 特に80歳以上では1.4-1.6年であった. 標準治療施行例で検討したところ, 80歳以上での自立期間は1年未満であり, 後期高齢口腔癌患者の治療を検討する際に, 健康余命・自立期間が重要な指標となる可能性や治療選択の上で高齢者の機能評価の必要性が示された. そこで, 標準治療が可能である, いわゆる”Fit”と標準治療より治療強度が低い治療が適用となる” Vulnerable"な高齢患者の境界を明らかにすることを目的にG8スクリーニングツールに注目し検討した. 高齢口腔癌患者の治療方針の決定ならびに自立率にG8スクリーニングツールはPS, 病期とともに影響を与える因子であり, 全生存, がん特異的生存, 無再発生存においてもPSとともにG8スクリーニングツールが相関することが示唆され, 高齢口腔がん患者の治療方針決定や予後予測にPSとともに有効である可能性が示唆された.

本ミニレクチャーでは, 高齢口腔癌患者における評価・治療の展望についても検討したい.