第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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[ML-10] 根治不能の化学療法 いつまで?

〇佐々木 剛史1 (1.東海大学 医学部 専門診療学系 口腔外科学)

【略歴】
2001年3月 東北大学歯学部卒業
2001年4月 東海大学医学部付属病院研修医
2003年5月 東海大学医学部口腔外科臨床助手
2004年8月 いわき市立総合磐城共立病院歯科口腔外科医員
2005年4月 足利赤十字病院歯科口腔外科医員
2006年5月 東海大学医学部口腔外科助教
2012年4月 国立病院機構静岡医療センター歯科口腔外科医長
2015年4月 東海大学医学部口腔外科講師
2016年4月 国際医療福祉大学三田病院頭頸科レジデント
2018年4月 東海大学医学部口腔外科講師
切除不能再発・転移口腔がんに対して、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により近年奏効率は上昇し、生存期間の延長も認められるようになってきている。しかし、ほとんどのケースで治癒は期待できず、早晩死を迎えることになる。いずれかのタイミングでは化学療法を中止し、完全に緩和医療へ移行することとなる。
根治不能の化学療法の目的は、QOLを維持した延命と考えるが、化学療法をどのタイミングで終了するかの明確な基準はない。化学療法の終了は、患者自身の希望以外は、化学療法の継続が生存に寄与せずQOLを損ねることになると判断される時と思われる。しかし実臨床では多くの患者が終末期まで化学療法を継続し、終末期医療の質の低下が指摘されている。終末期の化学療法を中止して緩和医療への移行の決断は、医師と患者にとってお互い難しい問題である。実臨床で終末期まで化学療法を継続する理由として、患者へ希望を与える。化学療法の継続を患者へ勧めた方が医師の精神的負担が少ない。医師が生命予後の説明を避けるなどが挙げられている。一方で、医師が化学療法の中止を勧めても、最後まで化学療法に希望を求めようとする患者も少なくない。この背景には、患者の不十分な病態認識と化学療法による生命予後への過大な期待があると思われる。ASCOは、早期から患者との現実的な対話の必要性を指摘している。化学療法の目標、化学療法の効果と毒性、他の治療への変更、余命などについて継続して具体的な話し合いが勧められている。
終末期まで標準的な化学療法を行うよりも緩和ケアに専念する方が、QOLが高い上に生存期間も延長するとの報告もあり、適切な治療終了時期を見極めることは極めて大切であると考える。
本講演では、①終末期の化学療法の現状、②終末期において漫然と化学療法を継続することの不利益、③化学療法を終了するタイミングについて文献的に調査し、当科症例をまじえ現時点でわかっていることについて報告させていただく。