第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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5.悪性腫瘍・病理

[P05-14] 病理組織学的にリンパ上皮癌と診断された舌癌の1例

〇武田 大介1、重岡 学2、長谷川 真子1、村上 明希1、八谷 奈苗1、長谷川 巧実1、明石 昌也1 (1.神戸大学大学院医学研究科 外科系講座口腔外科学分野、2.神戸大学大学院医学研究科 病理学講座病理学分野)


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【緒言】

リンパ上皮癌(LEC)は扁平上皮癌(SCC)の亜型とされ、その多くが上咽頭や唾液腺に発生し、口腔内での発生はまれと言われている。また、EBウイルス感染と関連し、リンパ間質を背景に分化の不明瞭な腫瘍細胞が胞巣状に増殖する組織像を特徴とする。今回われわれは、病理組織学的にLECと診断された舌癌を経験したので報告する。

【症例の概要】

患者は72歳女性。既往歴に虫垂炎、右嚢胞性腎癌があり、EBウイルス感染歴はなかった。当科初診約5か月前に左舌縁に違和感を自覚し、10日前に近耳鼻咽頭科を受診し白板症と診断された。当科初診2週間後に生検し口腔上皮異形成(OED)の回答を得た。早期粘膜切除は希望されず経過観察の方針となったが、約11か月後に腫瘤形成したため生検しSCCの回答を得た。生検1か月後に全身麻酔下で左舌部分切除術を施行した。切除検体は病理組織学的に、表層では顕著な角化を示すSCCの像であるのに対し、深部では分化傾向が乏しく高度のリンパ球浸潤により癌胞巣が不明瞭となっていた。また、同部は免疫組織学的にAE1/AE3が癌細胞に陽性を示し、CD3/CD20は特定の細胞のmonoclonalな増殖像を示さなかった。さらに、EBER-ISHでは浸潤リンパ球の核に陽性所見を示した。

【結語】

当科で過去に経験した症例ではLECは存在せず、渉猟し得た限りでは舌発生例の報告はなかった。一方で、本症例をLECと断定するかはさらなる検討が必要であり、今後も詳細な経過観察を行う予定である。