[I-O-08] 心エコーによる健常小児の右室機能評価についての検討
Keywords:健常小児, 右室機能, 正常値
【背景】右室機能評価の定量的な指標として、三尖弁収縮期移動距離(TAPSE)、右室面積変化率(FAC)、組織ドプラ法による右室自由壁弁輪部における収縮期速度(S波)、speckle tracking法(STI)による右室長軸方向のstrain (global longitudinal strain:GLS)などが用いられているが、健常小児における報告は少ない。【目的】健常小児のTAPSE、FAC、S波、GLSについて検討する。【対象・方法】対象は健常小児:143例(男:76例,女:67例)で、年齢は日齢21~18歳(中央値:5.0歳)であった。エコー装置はGE社製S6で、心尖部四腔断面像よりTAPSE、FAC、S波を測定した。GLSはSTI解析が可能であった83例(男:43例,女40例)においてGE社製Echopac PCを用いてオフラインで解析した。また、それぞれの指標と年齢、身長、体重、体表面積との相関関係について線形回帰分析を用いて検討した。【結果】TAPSEの平均値は18.9±3.9 mm(男:18.9±4.2 mm,女:19.0±3.6 mm)、S波の平均値は12.3±2.1 cm/s(男:12.4±2.2 cm/s,女:12.3±1.9 cm/s)で、いずれも年齢、身長、体重、体表面積すべてにおいて有意な正の相関を認めた(p<0.001)。特に、TAPSEと年齢、身長、体重、体表面積の間に強い正の相関を認めた(各々r=0.79,r=0.86,r=0.75,r=0.81)。また、TAPSEとS波は有意な正の相関を認めた(r=0.62, p<0.001)。一方で、FACの平均値は45.7±5.3 %(男:45.7±5.2 %,女:45.8±5.3 %)、GLSの平均値は-26.2±3.6 %(男:-25.9±3.7 %,女:-26.6±3.5 %)で、いずれも年齢、身長、体重、体表面積の間に相関を認めなかった。すべての指標において男女間に有意差はなかった。【結語】小児において、TAPSEやS波を用いた右室機能評価を行う際は年齢や体格の影響を考慮する必要がある。一方で、FACとGLSはこれらパラメーターに影響を受けることなく評価可能である。右室長軸方向の収縮能の指標とされているTAPSEとs波は有意な相関関係を示す。