[I-O-36] フォンタン型手術後患者における発達障害・頭痛・起立性調節障害
Keywords:発達障害, 頭痛, フォンタン型手術後
【はじめに】学童期以降の先天性心疾患患者の診療において、心疾患以外の日常生活に支障を来たす症状・状態についての相談を受けることも多い。特に複雑心奇形では、ADL/QOLに影響する頭痛、起立性調節障害、発達障害の頻度が多い印象がある。【目的】複雑心奇形の代表疾患群としてフォンタン型手術後患者における上記病態の頻度、特徴や診療における注意点を明確にする。【対象】当院経過観察中のフォンタン型手術後患者133名(小学生以上、6.5~29.2歳、平均15.9歳)。染色体異常・全身疾患を除く。【結果】知的障害(境界領域含む)・広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害・学習障害などの診断を受けた患者は28名(21%)、低年齢で不明瞭だが支援を必要とする患者は7名(合計26%)であった。28名中、中学生以上は12/90(13%)、小学生は15/45(33%)と圧倒的に低年齢の患者に多く見られた。低年齢の患者では大動脈への介入や手術を要する腹部疾患の合併を認める者が多い傾向にあったが、手術回数やSpO2との因果関係は認められなかった。投薬を必要とする頭痛を頻回に訴える患者は14名(10%)で、多くが中学生以上であった。治療を要するほどの明らかな起立性調節障害を認める者は6名(5名は中学生上)と多くはなかったが、いずれも睡眠時無呼吸症候群、不安やうつ、パニック障害など多くの問題を随伴しており、経過観察上は難渋した。【結語】一般小児における発達障害の頻度は数%、起立性調節障害は中高生の20%前後、小児の頭痛のほとんどは片頭痛であり、その頻度は小児全体の1.7~17%と言われている。フォンタン型手術後患者の発達障害の頻度は一般頻度に比して明らかに高率であり、低年齢において顕著であった。また起立性調節障害や頭痛の頻度は特に高率ではないが、その半数上に心理・精神的疾患を伴っており、いずれも心疾患患児が社会生活を送る上で大きな障害となり得るため、日常診療においても注意深く対応する必要がある。