[I-O-41] 小児開心術後反回神経麻痺における発生因子の検討
Keywords:反回神経麻痺, 経食道心エコー, 小児開心術
【背景と目的】反回神経麻痺に伴う嚥下障害は,経口摂取遅延による在院日数の増加や誤嚥性肺炎などの重篤な合併症につながる.一方,経食道心エコー(TEE)は今や小児心臓外科手術には不可欠なモニターとなったが,反回神経麻痺等の合併症の報告も散見される.今回,小児開心術後に反回神経麻痺をきたした症例についてその発生因子を検討した.【方法】2009年~TEEが使用された15歳以下の小児開心術111例を対象.年齢4.0±4.5歳(7日-15歳),体重15.6±13.5kg (2.7-55kg),術式はASD閉鎖17例,VSD閉鎖47例,AVSD修復5例,TF修復13例,その他29例.TEEプローブは5種類を体重別に使い分け,シャフト径4.5mmが体重3kg未満(3例)に,同6.8mm single planeが体重3~5kg(13例)に,同6.8mm bi-planeが体重5~7kg(17例)に,同7.4mmが7~35kg(71例)に,同11mmが35kg以上(18例)に用いられた.術後反回神経麻痺が診断された症例につき,その発生因子として年齢,体重,術式(動脈管操作の有無),手術時間,人工心肺時間,TEEプローブサイズ(シャフト径 /体重),挿管チューブ径(直径/体重)について検討した.【結果】術後反回神経麻痺は,11例(9.9%)に発生.TEEシャフト径 /体重が高値となった6.8mm single plane使用の体重3kg台,7.4mm 使用の7-8kgの症例や3-4.5mmの挿管チューブでチューブ径/体重が0.5以上の高値の症例に多く発生し,また麻痺発生例では手術時間が有意に長かった(534±175分:409±137分).単変量解析において,低体重(p=0.04),手術時間(p=0.03),TEEプローブサイズ(p=0.01)),挿管チューブ径(p=0.02)が挙げられたが,多変量解析ではTEEプローブサイズ(p=0.04))のみが有意な因子であった.【考察】声帯麻痺は,手術時間の長い症例でのTEEの関与が強く疑われるが,気管チューブの影響や両者の相互作用も考慮する必要がある.特に低体重児症例ではTEEプローブの体重による使い分けが重要と考えられた.