[I-O-43] 小児心臓カテーテル検査後の造影剤腎症(Contrast-Induced Nephropathy; CIN)に関する検討
Keywords:造影剤腎症, 心臓カテーテル検査, 腎不全
【背景】血管造影、造影CTの適応拡大とともに造影剤使用頻度は増え、CINは院内発症腎不全の原因として認識されているが、定義が一定せず病態生理も解明されていない。CHD児におけるCINの情報は少ない。以前我々は、無症状でも14.6%の患者がCINの定義を満たし、心不全や利尿剤内服がCINの危険因子であることを報告した。【目的】症例数を増やし、CHD患者におけるCINの頻度、危険因子を調べる。【方法】心臓カテーテル検査の検査前と検査24時間後に血清Cr値を測定した。CINの定義を「血清Cr値の25%以上の上昇、または0.5mg/dl以上の上昇」とし、造影剤は低浸透圧性非イオン性のiohexol(オムニパーク)を使用した。輸液期間は前日より行い検査当日の夕方までとして固定した。【対象】2007年11月~2014年12月に当科で心臓カテーテル検査を行った、生後2日~77歳の370名。【結果】0.3~8.9cc/kgの造影剤を使用し腎不全症状を認めた患者はいなかった。Cr値上昇率は25%以上が47人(12.7%)、10~25%が91人(24.6%)、5~10%が51人(13.8%)、5%未満が181人(48.9%)で、0.5mg/dl以上の上昇を認めた患者はいなかった。心不全患者の方が心不全のない患者に比べてCIN発症の頻度は高かったが有意差はなかった。(心不全あり16.8% vs なし11.0%、p=0.13)。心不全患者の中では、利尿剤内服者の18.2%にCINが発症し、非内服者における発症(4.8%)より高率だった(p=0.14)。利尿剤にACEIまたはARBも併用すると25.9%に発症率が上昇し、非内服者と有意差を認めた(p=0.05)。造影剤2cc/kg以上の使用でCIN発症が19.5%、2cc/kg未満では9.3%で有意差を認めた(p=0.006)。年齢、性別、検査前Cr値、チアノーゼの有無でCINの発症に有意差、相関を認めなかった。【まとめ】無症状ではあるが12.7%の患者がCINの定義を満たした。心不全、利尿剤内服、利尿剤とACEI/ARBの併用、造影剤2cc/kg以上の使用時にはCINの発症に注意が必要である。