[I-O-47] 乳幼児期に施行した僧帽弁置換術の遠隔期成績
キーワード:僧帽弁置換, 僧帽弁閉鎖不全, 僧帽弁狭窄
【目的】乳幼児期の僧帽弁狭窄(MS)または僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する僧帽弁置換術(MVR)の中期、遠隔期成績を検討する。【対象と方法】1984年3月から2014年3月までの間に当院でMVRを施行された乳幼児13人(男児3人、女児10人)、計16回の弁置換を対象とした。初回手術施行時の平均年齢は2.2才(3ヶ月~4才)、平均体重は10.0kgであった。MVRの適応となった疾患は、MR 12例(先天性僧帽弁閉鎖不全症cong.MR 5例、他の心疾患を有する症例7例)、先天性僧帽弁狭窄症(cong.MS)1例であった。【結果】術後の合併症は生存例9例中2例で認めており、1例が術後14年後に心房粗動、1例が術後3年後に抗凝固薬内服に伴うくも膜下出血を発症した。死亡例は、MVR施行28年後の遠隔期死亡1例、術後早期死亡3例であった。再弁置換を要した症例は3例あり、いずれもCarbomedicus 16で置換したが、成長による相対的な有効弁口面積の狭小化が原因での再弁置換であった。1例はcong.MRの8ヶ月の女児で5年後に再手術、1例はcong.MRの3ヶ月の男児で10年後に再手術、1例はcong.MSの1才の女児で11年後に再手術となった。成長を待っての再弁置換ではあったが、いずれも左心系の成長は乏しく、1 size upしか行えなかった。現在生存している9例のうち3例は今後再弁置換、再々弁置換の可能性が高い。【結語】乳幼児期のMVR後は左心系の成長が得られず、成長に伴い相対的MSとなることが危惧される。その際に体格に見合った十分なサイズの再弁置換が行えず、更に再々弁置換となる可能性がある。十分なサイズのMVRが行える体格までは、可能な限り僧帽弁形成術で成長を待ち、乳幼児期のMVRは回避することが望ましいと考えられる。