[I-O-58] 胎児期・新生児期発症の左室心筋緻密化障害における臨床遺伝学的検討
Keywords:胎児, 心筋症, 心筋緻密化障害
【背景】左室心筋緻密化障害(LVNC)は、粗い網目状の過剰な肉柱形成と深い間隙を認める心筋疾患て_あり、心内膜側に非緻密化層、心外膜側に緻密化層の二層構造を有する。胎児期発症および新生児期発症のLVNCは重症例が多いことが報告されているが、遺伝子変異との関連については、報告が少ない。今回、我々は、胎児期・新生児期発症のLVNC患者に対して臨床遺伝学的検討を行った。【方法】日本人の51人のLVNC患者を対象とした。51人のうち、13例の家族例と38例の孤発例であり、15例は胎児期発症例(乳児群)で、36例は新生児期発症例(新生児群)であった。これらの症例に対して、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行い、臨床症状とあわせて2群間の比較検討を行った。【結果】胎児群では、胎児水腫、胎児徐脈で妊娠中期に見つかる例が多く認められた。新生児群では、心不全に由来すると思われる呼吸障害や哺乳障害で見つかる例が多く認められた。51例中16例の患者(胎児群4例、新生児群12例)において遺伝子異常が認められた。12例の患者(胎児群3例、新生児群9例)においてサルコメア遺伝子異常が認められた。4例の患者(胎児群1例、新生児群3例)においてサルコメア以外の遺伝子異常が認められた。死亡例は、胎児群13例中6例、新生児群24例中4例であった。遺伝子異常を有する群と有しない群では、症状や死亡率に有意差は認められなかった。肉柱層の深さや左室壁て_の広か_りの程度の検討では、胎児群においては、新生児群に比べて、より広範囲に肉柱形成が認められ、右室においても肉柱形成が認められる傾向が見られた。【結論】胎児期・新生児期発症のLVNCでは心不全を契機に見つかる症例が多数であり、とりわけ胎児期発症例は新生児期発症例に比べて予後不良であった。胎児期・新生児期発症のLVNCにおいて3割程度に遺伝子異常が認められた。