第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-13 術後遠隔期・合併症・発達

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術後遠隔期(発達)

Thu. Jul 16, 2015 5:20 PM - 5:50 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:桑原 直樹 (岐阜県総合医療センター)

I-P-089~I-P-093

[I-P-089] 肺高血圧を合併した乳児多発性肝血管腫に対するプロプラノロールの使用経験

大谷 勝記1, 嶋田 淳1, 北川 陽介1, 三浦 文武1, 高橋 徹1, 米坂 勧2, 金城 学3 (1.弘前大学医学部 小児科, 2.弘前大学医学部 保健学科, 3.八戸市立市民病院 小児科)

Keywords:多発性肝血管腫, 肺高血圧, プロプラノロール

【はじめに】新生児や乳幼児の肝血管腫は,自然退縮する例が多いものの,時には呼吸循環不全,凝固障害等の重篤な病態を呈するため早急的な治療が必要となる.近年,血管腫に対してβ遮断薬であるプロプラノロールの有効性が報告されて以来,報告例が急増している.【背景】新生児や乳児における危急的な肝血管腫の病態に対する治療は確立されていない.【症例】日齢25,女児.新生児マススクリーニングで高ガラクトース血症を指摘され,精査中に口唇チアノーゼ,多呼吸,心雑音,胸部X線で心拡大,心エコーで右心系拡大を認められた.当科入院時,胸腹部及び下肢に数mm~1cm大の血管腫を数個,呼吸障害,肝腫大,心エコー検査で中等度の三尖弁閉鎖不全及び僧房弁閉鎖不全,右房右室間圧差80~90mmHg,動脈管開存(径2mm),卵円孔開存等を認め,肺高血圧を合併する心不全と診断し初期治療を開始した.腹部超音波検査,造影CT,MRI検査を追加し,肝内シャント(肝内動静脈短絡,肝動脈門脈短絡,門脈肝静脈短絡)を合併する多発性肝血管腫を確認した.肺高血圧の治療に難渋したがプロプラノロールを併用し急性期の治療より離脱した.以後,プロプラノロールを継続し,肝血管腫は消失,縮小傾向を示した.【考察】本症例における肺高血圧,心不全の原因は十分解明されていないが,動静脈シャントによる高拍出性心不全や,高心拍出状態が肺循環でのずり応力(shear stress)をきたし肺血管リモデリングをきたすという機序などが考えられている.【結論】多発性肝血管腫に対するステロイド剤,抗がん剤,放射線照射,外科治療,肝移植等の既存の治療法に対しては,副作用,有効性,合併症等の観点から一定の見解が得られていない.今後,プロプラノロールがその有効性や低侵襲性を背景に,第一選択の治療法になりうることが示唆されるが,さらなる症例の集積と検討が必要である.