[I-P-090] 先天性心疾患患児の発達には個人内差が大きく、個別評価に応じた発達支援が必要である
Keywords:先天性心疾患, 発達検査, 発達支援
【はじめに】重症先天性心疾患患児の救命率は小児循環器診療の進歩により飛躍的に向上し、就学や成人期の問題が重要性を増してきた。発達遅延はその焦点の一つである。当小児循環器外来で施行した発達検査結果と就学状況から先天性心疾患患児の発達支援を考察する。【方法】知的発達、認知特性、個人内差を客観的に評価し、個人に適した支援を行うため、原則として5歳未満は新版K式(9例)、5歳以上はWISC-3(28例)による発達検査を行った。検査結果、および母親が感じている児の課題を電子カルテから後方視的に検討した。【結果】母親が感じる児の課題は、検査結果と概ね一致した。学童期の発達遅延では、知的障害、学習障害とは別にWISC-3で下位検査項目の差が大きい児が多く存在し、群指数のパターンからその児に合わせた支援の必要性が示唆された。28名中、下位検査項目が5以下の項目を有したのが19人(68%)で、その中でばらつき(下位検査の言語性と動作性をわけて、それぞれの平均の差が3以上)のある症例は12人(43%)だった。下位検査項目がすべて6以上で、ばらつきのある児は、4名(14%)であった。【考察】母親は乳児期から発達遅延を実感している場合も、その取り組みは家族によって様々である。発達検査により早期に客観的に発達、特に得意・不得意を把握し、児に適した環境調整により発達の促進が期待される。児自身の発達・発育(身体的発育、言語、情緒・社会性、認識の発達)の経時的評価と並行して、家族・生活環境、教育現場環境を調整していく必要がある。【結論】児の発達障害は、児・家族の両者にとって大きな課題である。重症先天性心疾患患児には、発達障害のリスクが多く、早期から発達検査を実施し、成長・発達段階に合わせた支援や移行期支援を行う必要があり、そのための支援体制とシステム構築が必要である。