第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-13 術後遠隔期・合併症・発達

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術後遠隔期(発達)

Thu. Jul 16, 2015 5:20 PM - 5:50 PM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:桑原 直樹 (岐阜県総合医療センター)

I-P-089~I-P-093

[I-P-091] 重症心疾患だからこそ早期より発達を視野に-心不全安定化から発達・生活へ、将来の主軸の変化を見据えて

大津 幸枝1,2, 増谷 聡1, 金 晶恵1, 桑田 聖子1, 栗嶋 クララ1, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 先崎 秀明1 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器, 2.埼玉医科大学総合医療センター 看護部)

Keywords:発達検査, 就学, 家族支援

【背景】治療法の進歩により、多くの重症先天性心疾患が救命可能となり、スムーズな社会生活移行支援がより重要になってきた。頻回の入院管理を要し、在宅酸素施行中の重症心疾患児・家族が小学校入学にあたり直面した問題から、早期よりの発達検査と社会支援整備の重要性が示唆されたため、報告する。
【症例】通常の幼稚園の年長で、療育施設に月一回通園している。左心低形成症候群、フォンタン手術後、三尖弁置換・再置換術後。心臓手術回数6回、人工心肺4回。頭蓋内出血既往、てんかんあり。幼児期まで周期性嘔吐と随伴する心不全増悪のため、頻回の入院管理を強いられてきた。在宅酸素施行中であるが、理解ある幼稚園に通園でき、主治医と両親は “これまでの重篤な状態と管理を加味すれば、児なりの成長が認められる”と定性的・前向きに評価してきた。
しかし、小学校入学前年、発達遅延、多動、在宅酸素のため、支援学校・学級選択に難渋し、両親は当惑した。同時期施行した新版K式発達検査では、発達の主軸は二歳半から三歳相当であった。両親は、循環器以外の発達遅延や多動についても、より早期に、より明快・詳細な説明が欲しかったと感想を持った。
【考察】長期に重篤な状態が続き、救命と心不全の安定は、家族・病院スタッフの一大共通目標であった。小学校選択の問題に直面する時期には、児・家族にとって、救命と心不全の安定は、かつての最優先課題から一前提条件へと変化し、発達や生活の質が新たな最優先課題となっていた。より早期からの発達評価をしていれば、発達評価にとどまらず、診療・評価の軸を心不全管理に加え、社会面にも早期に展開するきっかけとなったかもしれない。それにより将来の社会生活に向けた問題点把握と必要な介入、社会支援整備、学校情報収集、家族の納得と心の準備、行動計画策定を通じ、スムーズな移行につながると考えられ、そのシステム作成が重要と考えられた。