[I-P-111] ストレス後の持続的な血圧上昇は活性化アストロサイトを介する
Keywords:アストロサイト, 高血圧, ストレス
(背景)本態性高血圧は脳内昇圧中枢の持続的な興奮によるものと考えられるが、脳の構成細胞のうち神経細胞のみに注目していた従来の研究では、その発症機構は解明されていない。最近の研究により、記憶など持続的神経活動増強では、アストロサイト(以下AC)が重要な働きをしていることが示されている。本研究では、ストレス負荷後に持続する血圧上昇は、ACの持続興奮によるとの仮説を血圧計測と組織学による実験で検証した。(方法)成熟ラット(n=14)を対象に、顔面へのエアージェットによるストレス負荷(以下AJ)を15分間行い、負荷後20分目までの血圧変化を観血的に測定した。これらをAC活性化阻害剤・arundic acid(AA)の投与前および低、中、高用量の各投与後に行った。組織学実験では、ラット(n=8)をAA前投与の有無とAJの有無による4通りの組み合わせに分け(各n=2)、昇圧中枢である視床下部、延髄吻側腹外側野において、細胞活性化マーカー・c-fosと、AC特異マーカー・GFAPの二重免疫組織染色を行い、AJによるACの活性化を解析した。(結果)全例においてAJ中の平均動脈圧は上昇した。その上昇度はAA用量依存性に減弱した。AA投与前の群で、AJ後全期間の平均動脈圧はAJ前の平均動脈圧よりも高値に留まった。一方、AA前投与群の平均動脈圧はAJ終了後に急速に低下した。組織学的解析では、AA前投与なし・AJあり群の視床下部と延髄吻側腹外側野における全細胞のc-fosおよびACのc-fosの発現は、他群よりも増加していた。(考察)神経細胞の興奮によって活性化したACは持続的にグリア伝達物質を分泌し神経細胞を持続的に興奮させる。血圧調節機構において、ストレス負荷は視床下部を介し延髄吻側腹外側野を興奮させて血圧を上昇させる。ストレス負荷に伴う神経細胞の興奮は視床下部や延髄吻側腹外側野のACを持続的に興奮させ、その結果ストレス負荷終了後も神経細胞の興奮が続き、血圧上昇が持続すると考えられた。