[I-P-116] 心肺停止で発症した冠動脈起始異常の2手術例
Keywords:冠動脈異常, 突然死, 冠動脈手術
【症例1】15歳男性(経過)運動中の胸部不快を主訴に救急搬送直後に心肺停止(CPA)。心室細動(Vf)に対し除細動。急性前側壁心筋梗塞、左心不全の診断で緊急冠動脈造影(CAG)を施行。左冠動脈(LCA)起始異常と起始部狭窄を認めた。攣縮を疑いPCIは施行せず。MDCTにてLCAが右Valsalva洞起始し壁内走行、大血管間後方走行後に分枝する冠動脈異常と診断。CT直後に再度Vf、CPAとなり除細動後にPCPS、IABP補助開始。重症左室不全から回復せず緊急手術となる。(手術)MDCT・経食道心エコーにて壁内走行部狭窄に加えて壁外走行する左冠動脈主幹部の器質的狭窄を認め、重症左室不全で心停止を回避したかったことから心拍動下CABG(RITA-LAD,LITA-LCX)を施行。(術後経過)心機能は改善。術後CAGで両graft開存もflow competitionを認めた。運動負荷試験で問題なくPOD35に退院。以後2年のフォローで症状なくgraft開存。【症例2】24歳男性(経過)授業中に突然意識消失。CPAとなりAEDでVfと判断され除細動後に救急搬送。循環は保たれ左室壁運動低下なし。緊急CAGにて右冠動脈(RCA)の左Valsalva洞起始を認めたが明らかな狭窄は認めず。MDCTでRCAがLCAと隣接して起始し壁内走行して大血管間を前方に走行する冠動脈異常と診断。大血管間での圧排を認めたため準緊急手術の方針となる。(手術)心停止下にRCAを壁外走行部で切断。右Valsalva洞にtranslocationした。(病理)RCA壁外走行部切断端で大動脈壁内走行でみられる像を認めた。(術後経過)心機能低下はなく術後CAGで狭窄・攣縮を認めず。POD44に退院。以後4年のフォローで症状なし。【まとめ】若年期にCPAで発症した冠動脈起始異常の2例を経験した。対側Valsalva洞起始・壁内走行・大血管間走行は急性冠虚血から突然死のリスクが高く手術適応となるが、壁外走行部位にも狭窄を認める可能性があり症例に適した手術方法の選択が求められる。