[I-P-138] 心房細動を合併した成人先天性心疾患患者に対するRadial手術の有用性
キーワード:Radial手術, 心房細動, 成人先天性心疾患
【目的】心房細動との合併率が高い成人先天性心疾患(ACHD)では、心疾患手術とMaze手術を同時に行うことで、その外科的治療成績は向上してきているが、単に正常洞調律に復帰させるのみだけでなく心房収縮を最大限に回復させ得ることが、効果的な血栓塞栓症の予防のみならず術後複雑な血行動態を呈する事の多いACHDでは有用である。当院では不整脈治療に関して術後心房収縮能の回復が不良なMaze手術の欠点を補うべくRadial手術を行ってきたが、その手術成績や問題点を後方視的に検討した。【方法】2010年以降に心房細動を合併したACHDに対して心疾患手術(先天性心疾患修復術+三尖弁輪縫縮術)とRadial手術を同時に行った4例を対象とした。手術時平均年齢68(65-73)歳、基礎疾患はASD3例、VSD1例で、慢性心房細動3例、発作性心房細動1例であった。術前左房内血栓や脳梗塞などの血栓塞栓症の既往は全例なかった。Radial手術の特徴1)心房切開線を心房興奮伝播経路と冠動脈心房枝に平行に行うことでMaze手術の際に生じる心房筋虚血や非生理的心房興奮パターンを予防することが出来る、特徴2)右心耳を温存することで心房利尿ペプタイドの分泌を維持できる。【結果】術後平均597(79-1600)日の観察期間において全例洞調律で維持されペースメーカー植込みを要した症例はいない。また術後経過で血栓塞栓症発生例はなし。術後心臓超音波検査で行った左室流入部血流波形から計算した左房収縮能は術直後より回復し経時的変遷で更なる改善傾向を示した。【結論】ACHDに心房細動を併発した症例に対するRadial手術は、術後良好な心房収縮と血栓予防効果をもたらし得る治療法と考えられた。しかしながら心房内興奮伝播経路に異常を来たすことのある複雑性先天性心疾患合併例に対しては、心房内伝導ブロックを生じないような心房切開線の工夫などが治療成績向上に向けての今後の課題である。