[I-P-140] 先天性完全房室ブロックに対するペースメーカー植込み術後の心室同期不全に対し,心室リード再配置により心室再同期化を得られた心房中隔欠損症の1例
Keywords:完全房室ブロック, 心室同期不全, ペースメーカー
【背景】心外膜リードを用いたペースメーカー植え込み術の際,心室リードは右室とするのが一般的である.リードの縫着部位と心機能,心室壁運動の同期障害に関する報告が散見される.今回,先天性完全房室ブロックに対するペースメーカー植込み術後に心室同期不全による心不全を発症し,心室リード再配置により心室の同期化と心不全の軽快を得られた1例を経験したので報告する.【症例】症例は3か月の男児.抗SS-A抗体陽性の母で,陣痛発来のため妊娠36週5日,体重2083 gで帝王切開で出生した.妊娠21週2日に完全房室ブロックと胎児診断されており,出生直後に胸骨正中切開で一時的ペーシングを行った.出生後,抗SS-A抗体陽性,心房中隔欠損症と診断された.1か月後にDDDペースメーカー植込み術(心室リードは右室流出路と右室心尖部)を行ったが,心不全が進行した.心臓超音波検査では心室同期不全のため心房中隔欠損を介した左右短絡量が増加しており,心臓カテーテル検査でQp/Qs 3.0,Rp 1.0であった.以上から3か月時に心房中隔欠損閉鎖術およびペーシングリード再配置を行った.術中エコーで両心室の同期が最も良好な位置を検索し,右室・左室両心尖部に心室リードを再配置した.術後心室同期不全は改善し,心不全は軽快した.【考察】心外膜ペーシング時には手技の安全性から心室リードは右室とすることが一般的である.一方で,右室ペーシングが原因で長期的に左室機能不全に陥り得るため左室への縫着が望ましいという報告もある.本症例は,右室リードを用いたペースメーカー植え込み後,心室同期不全に陥り,両心室に心室リードを配置したことによって同期が得られた.心室同期不全の再同期化に本法は有用であると考えられた.