[I-P-158] 肺動脈弁欠損、心室中隔欠損を伴う三尖弁閉鎖に対してTCPCに到達した一例
Keywords:肺動脈弁欠損, 三尖弁閉鎖, TCPC
【はじめに】肺動脈弁欠損(APVS)は、出生直後から呼吸管理に難渋し、早期に手術介入をすることが多い予後不良な疾患である。多くは心室中隔欠損(VSD)、肺動脈弁狭窄(PS)を伴う、いわゆるファロー四徴型であることが多い。しかし三尖弁閉鎖(TA)を伴う例は報告が少なく、中でもVSDを合併する例は極めて稀である。今回、APVSを伴うTA、VSDに対しTCPCに到達した一例を経験したので、我々の治療方針を中心に若干の文献的考察を加え報告する。【症例】女児。在胎30週の胎児心エコー検査でTA、APVSと診断された。在胎38週1日に帝王切開で出生、体重は2282gであった。出生後の心エコー検査で、TA、VSD、APVS、ASD/PFO、右鎖骨下動脈起始異常と診断された。生後4日目に、肺動脈絞扼、mBT shunt(3mmφ)、肺動脈幹縫縮を行った。術中の気管支鏡検査で、左気管支圧排が解除され内腔が開存している事を確認した。生後5ヵ月の心臓カテーテル検査での平均肺動脈圧は9mmHgであった。外来経過観察中に、中心肺動脈拡大が進行し、胸部レントゲン写真で左肺気腫を認めた。生後6ヵ月時に両方向性Glenn手術,左右肺動脈幹離断,肺動脈縫縮,右鎖骨下動脈起始異常再建を行った。術後、左肺気腫の改善を認めた。1歳5ヵ月時の心臓カテーテル検査では、平均肺動脈圧は16mmHg、PA Index:366で肺血管の発育は左右ともに良好であった。1歳5ヵ月時に、EC-TCPC手術(18mmφ ePTFE graft)を施行、3.5mmφのfenestrationを作成した。手術当日に抜管,術後4日目からクエン酸シルデナフィルの内服を開始した。術後27日目に退院となった。現在術後8ヵ月(2歳1ヵ月)であり、経過良好である。【結語】本症例では、胎児診断により出生前から治療戦略をたて,早期に肺動脈縫縮による肺血流の制御を行い、肺条件が良好に保たれたことでTCPCに到達し得たと考える。