[I-P-159] 肺底区動脈大動脈起始症を合併した左室性単心室に対し,右下葉切除施行後,フォンタン手術を施行した1例
Keywords:肺底区動脈大動脈起始症, フォンタン, 下葉切除
【目的】肺底区肺動脈起始症は,体動脈から直接起始する異常血管が肺底部を灌流するまれな先天性肺疾患である.体動脈から肺循環へのシャントを有するため,肺血管抵抗を上昇させる.一方左室性単心室には最終手術としてフォンタン手術を施行するが,循環の成立には低い肺血管抵抗を要する.左室性単心室に,肺底区動脈大動脈起始症を合併した症例の報告は文献的に調べうる限り1例のみで,きわめて稀である.今回,同様の症例に対し,患側下葉切除した後フォンタン手術を施行し,良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.【症例】症例は2歳女児.両房室弁左室挿入(DILV)と診断され,肺動脈絞扼術を経て,両方向性グレン手術が行われていた.その後,心臓カテーテル検査及び胸部造影CT検査で,腹部大動脈から右肺底区に灌流する異常血管を認め,肺底区動脈大動脈起始症と診断した.肺血管抵抗低下,容量不可軽減を目的に,右下葉切除を施行し,平均肺動脈圧,RpIの低下を認めた.その後フォンタン手術を施行した.術前から存在した左右肺血流不均衡は,肺切除直後では改善を認めなかったが,TCPC後6ヶ月時では,ほぼ解消していた.【考察】患側肺血管抵抗が高い状態で時間が経過すれば,肺血流不均衡となり,肺血管床の発育に左右差が生じる.その状態でグレン手術もしくはフォンタン手術を施行した場合,左右不均衡の原因が解消されても,非拍動流性の肺血流下では,肺血管床の発育および左右不均衡解消には時間を要する.そのため,グレン手術前までに,肺底区動脈大動脈起始症に対する治療を行うことが望ましい.治療は,一般的には患側下葉切除だが,正常肺血管床の損失を伴う.異常動脈の結紮やコイル塞栓は,肺梗塞が懸念されるが,下葉切除に比べて,低侵襲であり,正常肺血管床が温存される利点も大きく,特にフォンタン手術施行の場合有効な方法であり,検討すべき方法である.