[I-P-174] 小児大動脈弁疾患に対する外科治療戦略
Keywords:大動脈弁, AVP, グルタールアルデヒド
【背景】小児大動脈弁疾患の外科治療では体格の制約や抗凝固の問題でその選択肢に迷う。当院では、大動脈弁置換(AVR)ないしはRoss手術の時期を可能な限り遅らせる手段としてグルタールアルデヒド(GA)処理自己心膜を用いた大動脈弁形成(AVP)を行っている。【目的】当院の小児大動脈弁疾患に対する外科治療方針を検討する。【対象】2004年以降15歳未満(新生児を除く)で大動脈弁に対する外科介入を行った12例。大動脈弁再介入例とVSDの右冠尖逸脱は除いた。手術年齢は10ヵ月~14歳であった。【方針】Fenestrationのみの病変かAR主体の病変で高度変性弁尖が1~2尖であるものをAVPの適応とし、GA処理自己心膜による弁尖延長を中心に形成した。二尖弁や狭小弁輪、IEなどは、体格を考慮のうえRoss手術あるいはAVRを選択した。【結果】AVP:6例、Ross手術:4例、AVR:2例。手術時期(平均)はAVP:4歳/18kg、Ross手術:5歳/18kg、AVR:13歳/38kg。術後経過観察期間はAVP:5年10ヵ月、Ross手術:3年6ヵ月、AVR:7年4ヵ月であった。死亡例はない。AVP術式はFenestration閉鎖:1例、1弁尖の延長:3例、2弁尖の延長:1例、総動脈幹四尖弁の三尖弁化+弁尖延長:1例。再介入は1例で、AVP(3回目の正中切開例)後1年で形成弁尖の肥厚と可動性の低下を認め、ASが進行し術後5年でRoss-Konno手術を行った。AVP術後のAR moderate以上回避率は1年71%、5年50%であった。再介入の一例を除きAS進行は無く、最終エコー流速は平均2.0m/sであり、大動脈弁輪径は正常発育曲線に近いかたちで成長を認めている。Ross手術はKonno同時施行が1例。新大動脈弁閉鎖不全の進行なし、肺動脈弁位の再手術もない。AVRのうち1例(IE)はNicksとMVRを同時施行した。2例ともに弁機能不全、血栓症などの術後合併症を認めていない。【結語】各手術の術後成績は良好である。AVPも中期における耐容性が確認でき、AVR、Ross手術の時期を遅らせる手段として妥当であると考えられた。