[I-P-173] 小児大動脈弁置換術の治療戦略
Keywords:Konno法, 大動脈弁, 弁輪拡大
【目的】当院では小児大動脈弁置換術においてはSJM standard valveを基本に男性25mm以上、女性23mm以上の人工弁を用いることを基本方針とし、狭小弁輪症例には今野手術を積極的に選択してきた。近年広い有効弁口面積をもつ人工弁が登場し、弁輪拡大回避適応が増加している。今回、小児での適応に関して自験例を検討【対象と方法】2004年1月から2014年12月までに左室流出路疾患に対して23mm未満の人工弁を用いて大動脈弁置換術を施行した16例(総動脈幹症に対する今野術後血栓弁症例1例は除外)。手術時年齢は16.3±8.0歳。手術時体重41.0±23.9kg。手術時主診断はAS8例、AR1例、SAS2例、post Jatene3例、post Ross1例、TAC1例。弁輪拡大術は今野法:5例、Nicks法:1例。用いた人工弁は機械弁14(SJM17R(1)19R(2)CM19(1)ATS-AP16(1)18(3)20(3)22(3))、生体弁2(Mitroflow19(1)21(1))だった【結果】手術死亡1例。観察期間は3.9±3.7年で現在20歳以下の症例は8例であった。遠隔期死亡なし。手術時EOAiは1.30±0.45でPatient-Prosthesis Mismatchを示唆するとされるEOAi<0.85の症例はなかった。しかし成長に伴い遠隔期のEOAi<0.85は2例、EOAi<1.0症例は6例に増加し、更なる進行が危惧された。遠隔期においてEOAi:1.14±0.35、心エコーでのpeak flow:2.5±0.6m/s、LVSF:0.33±0.07でpeak flowとEOAiの間には強い負の相関を得た(R=-0.78,P<0.01)。peak flow≧3m/s群(Gp LF,n=5)とpeak flow<3m/s群(Gp SF,n=10)にわけて比較するとEOAiはGp LF:0.91±0.07, Gp SF:1.25±0.39,P<0.05、LVSFはGp LF:0.41±0.03, Gp SF:0.31±0.06,P<0.01と2群間に有意差を認め、Gp LFはより高心拍出量状態にあることが示唆された(体表面積に差はない)【結語】小児大動脈弁治療では成長に伴う体表面積増加や高い活動性を考慮した人工弁サイズの選択が望まれる。今野手術はそれを解決できる有効な術式であるが、今後注意深い経過観察が必要である。