[I-S02-07] 複雑心奇形の外科手術における心臓シミュレーター(3Dレプリカ)の有用性
キーワード:心臓シミュレーター, 複雑心奇形, 心内修復術
【目的】近年、CT画像データをもとに心臓レプリカ(心臓シミュレーター)の作製が可能となった。解剖学的修正大血管位置異常症という極めて稀な症例の心臓シミュレーターを提示し、その内部構造の再現性を実際の手術ビデオを交えつつ供覧し、外科手術におけるその有用性を検証する。【症例】20歳女性。先行手術なし。【心内構造】心形態はDORV、VSD、PS、PLSVC、Dextrocardia。解剖学的特徴は肺動脈へ繋がる右室流出路が大動脈の右後方に位置し、右冠動脈と房室間溝に挟まれて存在することである。【術前心カテ検査】SVC9/6(6)mmHg、RA11/7(6)、IVC9/7(7)、RV92/11、MPA20/8(12)、LPAw(6)、LV104/15、Ao88/59(72)、Qp/Qs=1.07、PAI=338、LVEDV=101%、LVEF68%、RVEDV=66.4%、RVEF59%、SaO2=95%、【手術術式】体外循環心停止下に右室前壁切開を行い、パッチにて心内通路(LV-Ao)を作成。右室流出路切開は右室前壁切開とは別に房室間溝にそって行い、右室流出路再建はTransannular Gore-Tex patch を用いた。肺動脈弁は前後二尖弁で、右室流出路切開の際に前尖を弁輪部から遊離縁手前まで切開し、弁輪拡大部に三角形の自己心膜パッチを当てて前尖弁葉を拡大した。弁下部の構造は特殊な形をしており(心臓シミュレーターで詳しく説明)、筋切除を行った後、前尖弁輪部はTransannular patchに縫着した。肺動脈弁輪径は17mmから22mmに拡大され、肺動脈弁機能も温存された。【術後心カテ検査】SVC12/11(10)mmHg、RA12/11(10)、IVC13/12(10)、RV35/11、MPA21/9(15)、RPA22/9(15)、LPA21/10(15)、LPAw(10)、LV105/15、Ao90/61(72)、LVEDV81%N、LVEF72%、RVEDV57%N、RVEF55%、【手術評価】右室狭小型でリスクも高かったが、心内通路の容積が最小限に抑えられ、かつ肺動脈弁機能も温存できていた。【結語】心臓シミュレーターは心内構造を実物大で立体的に確認できるため、正確な外科手術を行う上で極めて有用なツールである。