[I-S04-05] 動脈管分化の分子メカニズム
Keywords:動脈管, プロスタグランディンE, 分化
動脈管の閉鎖には、血管収縮による機能的閉鎖と、内膜肥厚形成を特徴とする血管壁のリモデリングによる解剖学的閉鎖の2つの過程が必要である。我々は特に動脈管のリモデリングに関与する分子機構に焦点を当てて研究を行い、プロスタグランディンEがヒアルロン酸を介する内膜肥厚形成や血管弾性線維形成に関与することで、出生後の閉鎖に貢献することを示した。本シンポジウムでは、プロスタグランディンEとその受容体EP4の新たな動脈管での役割を中心に、動脈管の機能に関する分子機序の最新のデータを紹介したい。動脈管では平滑筋層と内膜肥厚部にEP4が高発現する。EP4アゴニストで刺激したラット動脈管平滑筋細胞でマイクロアレイを行ったところ、fibulin-1の発現が著明に増加していた。定量PCRでもEP4アゴニスト刺激により、約500倍のfibulin-1の発現増加が認められた(n=10、p<0.01)。ヒト動脈管でも、免疫染色の結果fibulin-1の内膜肥厚部位での高発現が認められた。EP4アゴニストによるfibulin-1の増加は、Protein kinase A(PKA)阻害薬H-89や、phospholipase C(PLC)阻害薬D609で抑制された。EP4アゴニスト刺激ではラット動脈管平滑筋細胞の遊走が促進されたが、fibulin-1-siRNAにより抑制された(0.6-fold、n=6、p<0.01)。fibulin-1は、多様な細胞外基質と結合し、細胞の遊走、弾性板の分解を促進することが報告されていることより、PGE2-EP4シグナルは、fibulin-1を介して動脈管内膜肥厚の形成に関与していることが示唆された。