[I-YB01-03] 「僧帽弁輪収縮期移動距離(MAPSE) / 左室長」は最も簡便な左室長軸機能の指標である
Keywords:MAPSE, 長軸機能, speckle tracking
【背景】左室長軸機能は心機能低下の早期から障害され、その解析が臨床上重要である。Speckle tracking法を用いたglobal strainは最新の装置を要し,組織ドプラ法は正常値が年齢で異なり煩雑である。本研究では,最も簡単な長軸機能である「僧帽弁輪部の収縮期移動距離」(MAPSE)を心エコーM-modeから測定し、小児の正常値を明らかにすると共に、臨床的有用性を検討した。【方法】対象は新生児から15歳までの正常群230例(平均年齢6.2±4.9歳)。長軸機能として四腔断面左室外側弁輪部の組織ドプラ収縮期運動速度(s’)、MAPSEおよび拡張末期左室長(L)による補正値(MAPSE/L)を算出した。Speckle tracking法を施行できた87例は長軸方向global strain(GLS)を計測した。全例で左室後負荷として収縮末期壁応力(ESWS)を算出した。また、心筋疾患でも同様の検討を行った。【結果】[1] MAPSEは年齢と共に高値となった(r=0.83)。左室長で補正したMAPSE/Lと年齢との相関は弱かった(r=-0.14)。一方、s’/Lは1.59±0.31/secでMAPSE/Lよりも年齢との相関が大であった(r=-0.23)。[2] ESWSと左室内径短縮率(SF),MAPSE/L,s’/Lとは,各々r=-0.62,-0.07,-0.09の相関を示し,MAPSE/Lは後負荷の影響を受けにくかった。[3] GLS(0.22±0.02)はMAPSE/L(0.22±0.03)に近似し, 両者は正相関を認めた(r=0.54)。[4] Bland-Altman解析によるMAPSE/Lのinterobserver agreementは±0.014で再現性は良好であった(n=25)。[5] 心筋疾患の3例では左室内径短縮率は正常であったが、GLSは0.12-0.13と長軸機能低下が示唆された。MAPSE/L も0.10-0.15も同様に低下していた。【考察】MAPSE/LはGLSに近似していた。また、後負荷の影響を比較的受けにくく、正常値は幅広い年齢層でほぼ一定の値であった。MAPSE/Lは特別な心エコー装置を必要とせず,小児の長軸機能評価指標として臨床応用可能と考えられた。