[II-P-014] 母体自己抗体関連の先天性房室ブロックの予後の検討
Keywords:先天性房室ブロック, 心筋症, 胎児治療
【背景】抗SS-A抗体をはじめとした母体自己抗体関連の先天性房室ブロックは、出生直後よりペースメーカー治療を要する例が少なくないほか、遠隔期に心筋症を発症し予後不良となる例もあり、その管理は容易ではない。予後改善のための母体ステロイド投与については、その有効性について議論が多い。【目的】同疾患の中長期予後を明らかにすること。【方法】1996年から2014年の19年間に、当院にて周産期管理を行った母体自己抗体関連の先天性房室ブロック患者17例を対象とした。胎児治療として母体ステロイド投与を行ったのは1例のみであった。胎児期心エコー所見、出生後治療を有無、予後について後方視的に検討した。【結果】母体自己抗体は、抗SS-A抗体が16例、抗SS-B抗体が5例、抗RNP抗体が1例で陽性であった。32週で胎児死亡となった1例を除く16例が生存出生した。房室ブロック診断週数は中央値26週、出生週数は中央値36週1日、出生体重は平均2385gであった。母体リトドリン投与は9例、出生後イソプロテレノール投与は8例、ペースメーカー留置は11例 (0日-8ヶ月) に行われた。心筋症と診断されたのは3例、うち死亡例は1例であった。胎児心拍数60/分未満では心筋症発症は3/8例、60/分以上では心筋症発症は0/8例であり有意差を認めた (P<0.05)。心筋症発症例はいずれも胎児心拍数60/分未満で、母体リトドリン投与、出生後イソプロテレノール投与、日齢0でのペースメーカー留置が行われた例であった。徐脈の程度が軽く、出生直後にペースメーカー留置を必要としなかった症例では心筋症発症を認めていない。【考察】ステロイドの母体および児への副作用と、本症例群全体の良好な予後を鑑みると、本疾患に対するルーチンでのステロイド投与は慎重に検討する必要がある。胎児徐脈が高度であるほど心筋症発症率が高く、高度徐脈群に対しては心筋症発症を防ぐ目的での母体ステロイド投与が有用である可能性がある。