[II-P-082] 家族歴による早期遺伝子診断と介入を行ないえたBarth症候群の乳児例
キーワード:Barth症候群, 左室心筋緻密化障害, 家族性
【はじめに】Barth症候群はX連鎖劣性のミトコンドリア病であり,拡張型心筋症,好中球減少症,骨格筋異常をきたす稀少疾患である.今回,左室心筋緻密化障害(LVNC)の乳児例を早期発見し,遺伝子解析によりBarth症候群を強く疑い,合併症なく経過中のため報告する.【症例】家族歴:3年前に第2子が生後9か月で突然死し,剖検で心内膜線維弾性症と診断された.周産期歴:妊娠中は特に異常なし.在胎39週,体重2576gで第4子として出生.分娩時合併症はなかった.現病歴:新生児低血糖のため前医に入院し,その際施行した心エコーでは異常を認めなかった.1か月健診で心エコーを施行され,左室の拡大と収縮能低下を認めたため,当院へ紹介された.血液検査で白血球数と好中球数は正常範囲であった。NT-proBNP の著明な上昇、 トロポニンI の軽度上昇を認めた.胸部X線写真でCTR 0.69で心陰影の拡大を認め,心電図左側胸部誘導にストレインパターンを認めた.入院後,心エコー所見からLVNCと診断し,利尿薬,β遮断薬を開始し,徐々に体重増加を認めた.遺伝子解析によりTAZ遺伝子領域に新規の変異を認め Barth症候群の可能性を疑い,第2子の剖検組織を遺伝子解析中である.現在1歳1か月でつかまり立ち可能で、明らかな発育の遅れは見られていない.【考察】Barth症候群は心不全や筋緊張低下や好中球減少による易感染性のために,予後不良とされるが、表現型として心筋症のみのタイプもあるとされる.家族歴から無症状のうちに早期介入する事により予後が改善される可能性がある.内科治療に反応しない場合は、心臓移植の成功例も報告されており,今後合併症に注意し,移植登録を検討する必要がある.