[II-P-084] 心不全モデルラットにおける脳ミトコンドリアの形態異常に関する検討
キーワード:心不全, ミトコンドリア, ラット
【背景】先天性心疾患に対する治療レベルの向上に伴い、重症心疾患の患児も就学が可能な年齢まで生存するようになった。しかしこれらの患児において学習障害、精神発達遅滞を有する児が多いこと報告された。さらにMRIを使用した全脳容積が減少していたことも報告された。低酸素血症、心不全がどのようなメカニズムで発達期にある脳へ影響を及ぼすか、基礎的な検討はほとんどなされていない。【目的】右心不全モデルラットの脳の形態的な変化を明らかにする。【方法】右心不全モデルの作成;200g(仔)と400g(成獣)のSDラットに対して人工呼吸管理下に開胸手術を行い、肺動脈絞扼術を施行。術後4週間に心エコー装置(vivi8 12Mhzプロ-ブ)で心拍出量を計測し、心拍出量が60ml/min以下のものを心不全モデル成功例として,人工呼吸下に開胸を行い心拍動下でグルタールアルデヒドを左心室から注入し還流固定処置を行った。心停止後に全脳を摘出し脳前頭葉を分割後、すぐに液体窒素に保管した。その後電子顕微鏡(x10,000)での観察を行った。1匹に10個の神経細胞内に存在する全ミトコンドリア数と形態異常を呈したミトコンドリア数で評価を行った。【結果】仔ラットの右心不全モデル全例で前頭部の神経細胞のミトコンドリアは膨化・崩壊の形態的異常を認めた(異常形態ミトコンドリア/全ミトコンドリア数=0.37±0.16)。グリア細胞のミトコンドリアの形態は維持されていた。脳重量はコントロールと比較して有意な減少は認めなかった。成獣ラットにおいても神経細胞ミトコンドリアの形態異常を認めた。形態異常を呈したミトコンドリアは0.12+0.05で仔ラットに比べて軽度であった。【考察】ミトコンドリアは低酸素に暴露されると形態異常を呈し細胞の機能不全を引き起こす。今回の結果は心不全による酸素運搬の低下がミトコンドリアの形態異常の原因と考えられ、仔ラットでは容易に神経細胞への影響を受けると考えられた。