[II-P-086] 重症心不全管理における成分栄養剤による経腸栄養
キーワード:心不全, 成分栄養, 経腸栄養
【背景】心不全の管理中に経口摂取が困難な場合、絶食および中心静脈栄養を含む輸液管理を要するが、各種ミルクないし半消化栄養剤での管理も困難な時期が長期に持続することは稀である。成分栄養剤は脂肪成分が少なく、消化酵素を必要としないため、著しい低心拍出状態においても投与できる可能性がある。ミルクを増量できずに補液管理からの離脱ができなかったシャント血行動態の重症心不全の児に成分栄養剤での管理を行ったので報告する。【症例】症例は1歳2か月、体重6kgの女児で房室中隔欠損・両大血管右室起始のDKS+シャント術後。4か月時の同手術および生後2週での動脈管閉鎖+肺動脈絞扼術後にECMOの既往がある。9か月時に気管切開行うも心収縮低下と房室弁逆流による心不全のため呼吸器からの離脱はできず。BNPは最大9470 pg/mlがACE阻害薬とβ遮断薬導入で3020pg/mlまで低下も、胃残や注入中に低酸素のエピソードを生じるため、ミルクを間欠投与か持続投与かに関わらず400ml/日以上投与続けることができず、PDE5阻害剤と利尿剤の静脈内投与からも離脱できていなかった。ミルク増量に伴い、嘔吐、徐脈、消化管出血を生じ、絶食を経て少量からミルクを再開という状況を繰り返していたため、エレンタールPを投与することとした。14%の10ml×8回で開始し、増量および濃度アップで最終的に27%で500ml/日の投与が可能になった。増量に伴い肺うっ血を生じたため、注入速度を延長することで対応した。1ヵ月後にPDE5阻害薬と利尿剤の経静脈投与を中止。体重も徐々に増加し、在宅人工呼吸管理にて1歳7か月時に退院できたが、1か月後に肺炎球菌敗血症のため死亡した。【結語】長期にわたり経腸栄養が困難な重症心不全を管理する機会に遭遇することはほとんどないが、成分栄養剤での経腸栄養は心不全の急性増悪時などで栄養管理が困難な場合の選択肢となりうる。