[II-P-111] ノーウッド術後の左心低形成症候群では新生上行大動脈の伸展性低下と拡大のバランスが生命予後に関与する
Keywords:norwood, distensibility, aortopathy
【背景】上行大動脈(aAo)の伸展性低下は、死亡率や心血管イベント発生の独立した予測因子の1つとして大きな注目を集めている。様々な先天性心疾患での伸展性低下を伴うaAo拡大に関する報告が散見されるが、aAo低形成を伴う左心低形成症候群(HLHS)でのノーウッド術後の新生上行大動脈(Neo aAo)について検討した報告はほとんどない。【目的】ノーウッド術後HLHS症例でのNeo aAoの伸展性や血管径の変化と生命予後について検討する。【対象】2003年1月から2014年12月までに心臓カテーテル検査を施行したノーウッド術後HLHS症例14例(計43回のカテ施行)を検討した(H群)。川崎病後冠動脈軽度拡張・退縮例17例(計22回のカテ施行)を対象群とした(C群)。【方法】大動脈造影側面像で測定した収縮期・拡張期のNeo aAo径とNeo aAo圧を用い伸展性を算出した。また冠血流需要供給バランスの評価としてNeo aAo血圧波形からsubendocardial viability ratio(SVR)を算出した。【結果】H群でのNeo aAoの伸展性はC群に比べ有意に低下していた(p<0.0001)。H群では体格が大きくなるにつれて伸展性は低下し、血管径は著明に拡大していた(Distensibility: R=0.36, p=0.01, Diameter: R=0.87, p<0.0001)。Neo aAo径から求めた推定断面積と伸展性の積は、両群ともにSVRと強い正の相関を認めた(H群: R=0.76, p=0.0011, C群: R=0.77, p=0.0001)。Neo aAoの推定断面積と伸展性の積が低値のままの症例では有意に死亡例が多かった(p<0.001)。【結語】Neo aAoの伸展性低下に対して血管径を拡大させることで冠血流需要供給バランスを代償している可能性が示唆された。その代償機転が十分に働かない場合には重大な心血管イベントを来たす恐れが考えられる。