[II-P-128] 平均肺動脈圧が35mmHg未満の術後肺静脈狭窄の予後:必ずしも予後不良でないか
キーワード:肺静脈狭窄, 肺高血圧, 総肺静脈還流異常症
【背景】術後肺静脈狭窄(PVS)は,進行性で早期介入が必要とされる一方で,緩徐な経過をたどるタイプも散見される.【目的】平均肺動脈圧(mPAp)が35mmHg未満の術後PVS症例の予後を検討した.【方法】診療録(2009-2014)に認めたPVSの経過を後方視的に検討した.症例選択基準は総肺静脈還流異常(TAPVR)/部分肺静脈還流異常(PAPVR)術後に,エコーもしくは血管造影によりPVS(エコー;non-phasic flow.狭窄部フロー>2m/s.カテーテル;径の50%以上狭窄.狭窄部圧差4mmHg以上.完全閉塞を含む)を診断され,mPAp<35mmgの症例とした.除外基準は機能的単心室症例,atrial isomerism症例とした.【結果】対象は5例,年齢は中央値6.5歳(IQR 5.5-11.2).診断はTAPVR3例,シミター症候群(SS)1例,rt. PAPVR1例(TGA VSD PA PDA合併).初回手術時年齢は,中央値生後55日(IQR 26-152).PVS出現時期は,中央値術後117日(IQR 75-137日)で,肺高血圧(PH)を認めた症例は3例(TAPVR2例,SS1例)であった.TAPVR1例(術後2.7か月)とSS1例(術後6.9か月)に再手術をおこなったが,再々狭窄となった.しかし,いずれも肺内側副血管が発達しており,それ以上の手術介入は必要としておらず,最終的にmPAp<35mmHgであった.他のTAPVR1例は,術後4か月にPVSとなったが,術後1年時点で,mPApは29mmHgで,その後進行を認めないため再手術は適応しなかった.PHを認めなかった2例は,PHの出現を認めずに経過している.遠隔期合併症として喀血をTAPVRの1例に認め,コイル塞栓術を必要とした.【結語】術後4-6か月以上経過し平均肺動脈圧<35mmHgのPVSを伴うTAPVR/PAPVRにおいて,肺静脈側副血行路の発達を伴い,必ずしも予後不良ではない.