[II-P-156] 高侵襲小児開心術後の非外科的持続性出血に対する第VII因子製剤の有効性
Keywords:先天性心疾患, 遺伝子組換活性型第VII因子製剤 (rFVIIa), 術後出血
【目的】先天性心疾患の開心術では、人工心肺時間の延長に伴い容易に凝固・線溶の不均衡が惹起され、術後出血が遷延するケースが少なくない。昨今遺伝子組換活性型第VII因子製剤 (rFVIIa) が制御困難な非外科的持続性出血に有用との報告が散見され、当院で止血目的にrFVIIaを使用した先天性心疾患の開心術症例に関して、その功罪を後方視的に検討した。【方法】2003年以降に一般的な止血操作では制御困難であった非外科的持続性出血に対しrFVIIaを使用した高侵襲小児開心術10例を対象とした。内訳はNorwood 3例、Jatene 2例、TAPVC修復1例、IAA+VSD修復1例、Truncus修復1例、BDG+AVVR 1例、VSD再閉鎖1例。手術時日齢中央値90 (1-360)日、体重中央値3540 (2600-3600)g。全例人工心肺離脱後2時間に及ぶ止血操作と血小板輸血にも拘わらず出血が遷延し血行動態が不安定であったため、rFVIIa 90μg/kgを単回静注した。Norwood 2例とJatene 2例では約2時間後に同量を追加静注し効果を得た。【結果】平均rFVIIa使用量127 (87-194)μg/kgの静注により、全例最終投与から1時間以内に止血を完了し血行動態も同時に安定した。その後24時間のドレーン平均排液量は41(19-110)mL/kg/dayと少なかった。rFVIIa使用量と術前後のPT値変化量の間に正の相関を認めたが (P<0.05)、APTT値変化量との間には関連性を認めなかった。またHb絶対喪失量(術前後のHb値の変化と輸血量から算出)とrFVIIa使用量との間に正の相関を認めた (P<0.05)。rFVIIa使用に伴う血栓塞栓症などの有害事象は全例において認めなかった。【結論】侵襲度の高い先天性心疾患術後の非外科的持続性出血に対して、rFVIIaを補充することで破綻していた外因系凝固機能を回復させ良好な止血効果を得たものと考えられたが、一連のメカニズムの解明が今後の安全かつ適切な使用のためには不可欠と考えられた。