[II-S07-02] 弁尖延長・弁尖作製を用いた小児大動脈弁形成術-現状と可能性-
キーワード:大動脈弁形成, 弁尖延長・作製, 早期・中期予後
【背景】小児Ao弁治療を論じるとき以下の点は外せない。(1)成長と抗凝固療法の不利益から“自己弁温存型弁形成が第一優先”。(2)絶対的に小さく異形成レベルが高い小児期弁形成は成人以上に成績を安定させるのが難しい。(3)市販人工弁は直径16mm未満はなく、低年齢群への適用は困難かつ成績も不良。(4)後天性群と異なり“DKS, NorwoodとFontanという選択”があり、“対象弁を形成するのか置換(Rossを含む)するのか?”だけでない検討も必要。【最近の話題・課題】(1)“重症Ao弁狭窄症に対する自己弁温存型弁形成の成績は良好”また“僧帽弁では弁形成群の方が弁置換群より中長期予後が良好”など、弁形成を推奨する報告が多い。(2)Fontan術後の中長期予後は期待したほどでなく、UVR/BVR境界例の治療選択の再考が必要。(3)成人を中心にAo弁の形態と機能に対する検討が進み、弁尖延長・作製型弁形成の成績が安定して来ている。【目的と対象】1998年以降にAo弁または体循環流出路弁を形成・置換した120回中”自己弁温存型弁形成で対応困難と判断し弁尖を延長・作製した17例”について後方視的に検討し同群の現状と可能性を報告する。【結果】15例に対して17回(平均年齢7.3y[2d-17y]、AS:2,ASR:10,AR:5、尖延長12,弁作製7[重複あり])。平均観察期間3.8年で早期・遠隔期死亡なく、5年再手術回避率で60%。全体を3歳以下のS群と4歳以上のL群の2群に分けると、S群は再手術回避率が不良(5年20%)であるが、L群では5年、10年とも80%(同時期の自己弁温存型弁形成25例の再手術回避率は各80%,70%)。【結語】弁尖延長・作製型弁形成は、4歳以上では自己弁温存型と同等の成績が確認でき有用な選択肢となる。また、今まで“救命困難であった例・Fontanしか選択できなかった例”に実施された低年齢群の再手術率は高いが、全例がBV循環で生存しており一定の効果を期待できる。