[II-S07-03] Ross手術の遠隔成績
Keywords:ロス手術, 大動脈弁, 右室流出路
Ross手術は人工弁置換が不可能な新生児、乳児、あるいは若年女性の大動脈弁疾患に対する手術方法として有効であるが、遠隔期に問題が無いわけではない。今回我々の施設におけるRoss手術の遠隔成績について分析し報告する。【対象】1992年から2014年までにRoss手術を行った92例を対象とした。男女比64:28、手術時平均年齢11.9歳(日齢24日から38.7歳)新生児1例、1歳未満14例10歳未満29例、10歳以上48例であった。平均観察期間は11.8±5.7年(最長21.6年)であった。疾患は狭窄64例、閉鎖不全21例、弁上狭窄6例、その他1例。【結果】手術死亡は4例で、左室腫瘍手術1、活動性のIE1、LOS1、PS, VSD合併新生児1であった。遠隔死亡を1例に認めた。20年の生存率は95.5%であった。再手術は9例でA弁に対する再手術5例(Bentall 2, Konno AVR 1, AVR 1, AVP 1)であり、10年97%、15年97%、20年87%の再手術回避率であった。一方RVOT単独に対する再手術4例であった。当センターでは体格の小さい症例で後壁自己心膜、前壁ePTFE monocuspを用いており18歳以下の54例中38例でこの術式を行い平均右室流出路圧格差は15mmHg以下で10年間の右室流出路に対するintervention freeは92%であった。体格の大きな患者に対するホモグラフト25本では平均21.6年の観察期間で再手術を認めていない。遠隔期心機能に関してはRoss-Konno手術において遠隔期に心室容積、収縮能は正常化するものの、拡張末期圧の正常化は得られなかった。【結語】Ross手術は100%再手術を回避できる手術ではないが、術式の工夫で乳児期に行ったものでも成人に達するまで再手術を引き延ばすことが可能である。また成人では入手は困難であるもののホモグラフトは優秀な右室流出路再建材料であると考えられた。成長を考慮すべき症例における右室流出路再建術に後壁自己心膜前壁ePTFEの再建方法は再手術頻度を減少させる有効な手段であった。