第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム12
症例から学ぶフォンタン循環病態:~フォンタン循環への選択からその破綻への対応~

Fri. Jul 17, 2015 2:40 PM - 4:40 PM 第2会場 (1F ペガサス B)

座長:
大内 秀雄 (国立循環器病研究センター)
先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター)

II-S12-01~II-S12-04

[II-S12-02] 病態からみたFontan術後の至適管理法は?生活管理と新しい管理への取り組み

栗嶋 クララ1,2, 桑田 聖子1, 簗 明子1, 金 晶恵1, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 増谷 聡1, 先崎 秀明1 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器科, 2.福岡市立こども病院 循環器科)

Keywords:Fontan循環, 静脈キャパシタンス, 生活管理

Fontan術後の中心静脈圧(CVP)は術後遠隔期合併症と密に関連している。慢性期のCVPは7mmHgから20mmHg近くまでと非常に幅広い。一桁台のCVPはどのような循環動態によってなされるか。また、同じCVPであっても肝機能障害やPLEを発症するわけではない。これらを解明する鍵として、心臓の収縮能、拡張能、後負荷、肺血管抵抗、 心拍数の他、静脈キャパシタンス(Cv)という概念が重要である。静脈容量は動脈の30倍にもおよび、心不全患者と同様にFontan患者では静脈が収縮し、Cvが低下している。Fontan循環は、高いCVPに特徴づけられるが、これは低下したCvにより前負荷を維持するmaladaptationである。更に、Cvは臨床的な病態とよく関連している。Cvが低下した患者では、運動時のCVPは上昇しやすく、運動時CVPは肝線維化マーカーである4型コラーゲン7sと相関している。硝酸イソソルビド(フランドルテープ®)を用いてCvに対して介入を行った群(Super Fontan群)では、通常管理のFontan群と比較して、術後1年の心臓カテーテル検査で有意に低いCVPを示した。Cv低下を惹起する交感神経系活性化は、酸素投与、リンパマッサージ、和温療法(低温サウナ)などの非薬物療法により抑制効果を認める可能性がある。日常生活においても、交感神経が賦活化されるような生活スタイルや激しい運動は動的CVP上昇をもたらす可能性があり、実際一日の活動量測定にて若年PLE発症患者の活動量は非常に高い値を示した。
Fontan循環においては安静時CVPが同等であっても末梢静脈特性に応じた運動時のCVP変化が様々な程度で起こる。末梢静脈への介入のみならず、非薬物療法や患者のペースに合った生活スタイルや適度な運動もまた、Cvの改善により良好なFontan循環の成立に寄与すると考えられる。