[II-YB10-01] 小児大動脈弁疾患の治療戦略とその成績
Keywords:大動脈弁形成術, Ross手術, 人工弁置換術
【背景と目的】小児大動脈弁疾患に対する治療方針はまだ定まったものはない。これらの疾患群に対し当院では初回ないし再手術は種々の大動脈弁形成術で乗り切り、学童期に再介入を要する際にはRoss手術を、10代以降の再介入には人工弁置換を第一選択とする方針で対応している。今回、その成績について検討した。【方法】2007年より大動脈弁に手術介入を要した先天性心疾患12症例17手術を検討対象とし診療録をもとに後方視的に調査した。【結果】【AS群:5例】CoA合併3例、MR合併1例【初回弁介入】生後4日~10歳、中央値1歳。手術内容は全例で交連切開+弁尖slicing。追加として自己心膜による弁尖延長1例。弁上狭窄解除1例。【再介入:4例】再交連切開1例(生後2ヶ月)、Ross-Konno手術1例(6歳)、人工弁置換2例(13歳ATS22mm弁輪拡大、17歳OnX21mm)。再介入後3年(1-7年)で再交連切開例のみ軽度ASあり。【AR群:7例】【初回弁介入】生後12日~41歳、中央値7歳。自己心膜を用いた弁尖再建または延長が2例(12日、4歳)。異常組織切除による形成1例(2ヶ月PAVSD合併)。交連縫縮1例(7歳Fontan後)。人工弁置換3例(10歳ccTGA術後OnX23mm、27歳Fontan術後OnX23mm、41歳VSD合併OnX25mm)。【再介入:1例2手術】自己心膜による再再建術(2歳)、 Ross-Konnno手術(5歳)施行し、現在7歳でtrivial AR。再介入のない6例は3.5年(1-8年)経過し、全例AR mild以下で弁機能は良好。【両群の心機能】12例の平均体心室EF61%(39-80)で単心室とccTGAの2例以外はEF60%以上で、心機能は保たれていた。【結語】先天性心疾患における大動脈弁形成術はあくまで姑息的手術の域を出ないが、人工弁置換あるいはRoss手術が長期予後を期待して施行できる年齢まで、患児の成長や心機能の維持を保つ重要な役割を担っている。Ross手術あるいは人工弁置換術に到達した患者の予後は現在のところ良好である。