[II-YB10-02] 挙児希望若年成人女性に対するRoss手術の有用性
Keywords:Ross手術, 生体弁, 妊娠
【背景】大動脈弁置換が必要な若年女性に対する術式の選択に際し、挙児希望の有無は最大限尊重されるべきである。【目的】自己肺動脈弁大動脈弁置換術(Ross手術)と生体弁を用いた大動脈弁置換術の、周産期弁機能変化と遠隔成績を比較検討。【方法】挙児を希望する若年成人女性に対して、1992年から2013年の間にRoss手術を12例 [Ross群、手術時年齢中央値22.5歳(範囲、18-34)]に、1984年から2013年の間に生体弁置換術を9例 [生体弁群、30歳(22-39)]に施行。大動脈弁病変はRoss群で狭窄(AS) 3例, 閉鎖不全(AR) 6例, AS兼AR (ASR) 3例、生体弁群でAS 3例、AR 5例、ASR 1例。Ross手術の右室流出路再建には8例(67%)で肺動脈Homograftを使用。使用生体弁はCarpentier-Edwards弁7例、Mosaic弁2例。術後観察期間中央値はRoss群で10.3 年(1.0-20.8)、生体弁群で7.8 年(2.6-29.8)。【結果】Ross群に死亡例なし、生体弁群で人工弁感染による遠隔死亡1例。5、10、15年の大動脈弁の再手術回避率はRoss群で100、90、90%、生体弁群で100、86、57% (log-rank, p= 0.1)。再手術理由はRoss群でAR 1例、生体弁群でAS 3例、ASR 1例。Ross群の右室流出路に対する再手術はなし。Ross群5例、生体弁群3例が経妊後、無事出産(累計11回)。計11回の妊娠中7回(64%)で周産期にARが増悪。周産期のAS進行は生体弁群の1例のみ。各群1例ずつで周産期からのAR増悪に対し、出産後2年以内に再手術。肺動脈Homograft機能は周産期にも維持。【結論】挙児希望若年女性に対するRoss手術後、妊娠に至った全例が無事出産を経験。周産期のAR増悪は大動脈弁位自己肺動脈弁・生体弁共に観察されるが、大動脈弁位自己肺動脈弁に周産期のAS進行を認めないのに対し、生体弁ではAS進行による妊娠可能年齢内での再弁置換が高率であるため、Ross手術を第一選択とすべきと考える。肺動脈弁homograftは周産期の血行動態の変化に耐えうる有用なmaterialである。