[II-YB10-04] 小児大動脈弁疾患に対する心膜を用いた大動脈弁形成術
Keywords:大動脈弁形成術, 大動脈弁狭窄, 大動脈弁閉鎖不全
低年齢の小児大動脈弁疾患は、現在でも適切な治療継続に困難を伴う。当施設では、良い弁置換術/Ross手術を迎えることを目的のひとつとして、低年齢児にも大動脈弁形成術を適応してきた。積極的な弁形成は時に補填物が必要となる。心膜を弁尖として使用した大動脈弁形成術を検討した。【対象】2003-2014年の間に施行した大動脈弁形成術41例(同時期のRoss手術は30例, 大動脈弁置換術は48例)のうち、心膜を弁尖として使用した連続19手術(17症例; 2例は再弁形成術)。弁尖穿孔部のパッチ修復症例は含めていない。年齢中央値は7.3歳(生後2日-17歳)。手術適応はAS3,AR9,ASR7。総動脈幹症3例, TGA Jatene後1例を含む。術式は交連作成が2例、弁尖延長(部分的)が12例、弁尖延長(全弁尖)が2例、全弁尖作成が3例。【成績】観察期間は2.8±3.1年(最長11年)。早期/遠隔死なし。中等度以上のARを呈した症例は11例。うち4例が再手術介入。また3例が3m/sを越えるASを呈し、うち2例が再手術介入。計6例の再手術症例のうち1例は17歳のAR男児であり、2005年の手術後1.8年でAVR25mmとなった。残りの5例は全例3歳以下。再手術内容は再弁尖延長2例, 肥厚した心膜弁のslicing1例, AVR16mm 1例, AVR17mm1例,となっているが、大動脈弁輪径は12±4.7mmから15±5.1mmと全例で成長を認め、2例のAVR症例は弁輪拡大術を免れている。また、全弁尖再建した3例のうち新生児例がAS進行し再弁形成介入となっているが、残り2例(12歳と18歳)はそれぞれ術後観察期間3年と4年で、AR微量~軽度、ASなし、抗凝固および運動制限なしであった。【結語】低年齢小児群に対する心膜を用いた積極的な大動脈弁形成術は、再手術が問題となっているものの弁輪成長を認めており、より良い弁置換/Ross手術までの補完的かつ安全な術式になり得ている。今後も症例に応じて治療選択をするとともに慎重な経過観察が必要である。