[II-YB10-05] 若年Marfan症候群における大動脈基部手術の経験
Keywords:Marfan症候群, 若年, 大動脈基部手術
【背景・目的】大動脈基部病変に対する手術は基部置換術および大動脈弁温存基部置換術に大別される。基部置換術は確立された術式でその良好な成績が期待される。一方大動脈弁温存基部置換術は手技の難易度は高いが術後抗凝固療法が不要であり、活動度の高い若年者にとって非常に有用である。しかし若年者に限定したこれらの成績を論じた報告は少ない。そこで今回当科における20歳以下のMarfan症候群患者における基部手術の成績をまとめた。【対象・方法】1995年4月から2014年12月までの期間に20歳以下のMarfan症候群患者8例に対し基部手術を施行した。基部置換術群(B群)と大動脈弁温存基部置換術群(VS群)に分け、後方視的に検討した。【結果】対象期間にB群3例、VS群5例(reimplantation 3例、remodling 2例)を認めた。手術時年齢の中央値は17(14-20)歳であった。原疾患は大動脈弁輪拡張症6例、大動脈解離2例、手術時の大動脈弁閉鎖不全はI度4例、II度1例、III度3例であった。B群はすべて併施手術を認めた(それぞれ上行弓部下行大動脈置換術、上行大動脈置換術、僧房弁形成術)。初回基部置換手術となった理由はそれぞれ併施手術、ARの制御困難、先天性二尖弁であった。術後フォローアップ期間の中央値は10.3年であった(フォローアップ率100%)。術後早期死亡は認めなかったが、遠隔期死亡をVS群で術後12.3年に1例認めた。VS群におけて大動脈弁への再介入を2例に、それぞれ術後3.4ヶ月、13.3ヶ月で要した。VS群の大動脈弁再手術回避率は6ヶ月、12ヶ月、36ヶ月で75%、37.5%、37.5%であった。【結語】本コホートにおける大動脈弁温存基部置換術は再手術率が比較的高かったが、再手術後も含め遠隔成績は良好であった。抗凝固療法と再手術のリスクとを鑑みて、患者および親権者と十分話し合い術式を決定する必要があると考えた。