[III-O-07] 早期臨床使用を目指した小児用補助人工心臓の開発
Keywords:小児用補助人工心臓, 抗血栓性, 補助循環
【目的】臓器移植法でドナーの年齢制限が撤廃され,家族の承諾で小児の臓器提供が可能になり,小児心移植の選択肢が増え、小児補助循環の重要性が増加している。しかしながら,わが国で臨床使用可能な小児用の補助人工心臓は事実上無いに等しい。ニプロ社が製造販売している国循型人工心臓システム(VAS)の血液ポンプは,L, M, Sの3サイズあるが,実際に臨床で使われているのは,成人用のLサイズのみであり,他の2サイズは,発売当初に数例に使用された以外は今日までほとんど使用されていないのが現状である。今回,従来の血液ポンプに改良を加え,慢性動物実験による前臨床試験を施行したので報告する。【方法】改良した血液ポンプは,1回拍出量30 mL,最大拍出量 4.0 L/min(21 mm用CL-III弁を使用)で,送脱血管は内径10 mm(送血管は径7 mmの人工血管付き)を用いた。システム全体(血液ポンプ,送脱血管)の血液接触面にヘパリンコーティング(TNC coating)を施行した。体重21-29 kgのシバヤギ3頭に手術的に左室心尖脱血,下行大動脈送血の体外式左心バイパスを作成。術後,心拍非同期で,血液ポンプの適正駆動条件下で,左心補助施行。血行動態(動脈圧,中心静脈圧,バイパス流量),心電図,駆動条件を連続記録し、観察期間は最長3ヶ月とした。抗凝固療法はワーファリン ,抗血小板薬を投与した。【結果】2例は平均補助流量1.5 L/min、平均体血圧85 mmHgで予定の3ヶ月間安定して経過し、1例は、脱血管の心内膜への接触による脱血不良で、術後16日目に終了した。血液ポンプは人工弁座周囲に少量の血栓を認めるのみで成人用の血液ポンプと比べても同等以上の抗血栓性を有していた。【結論】改良した国循型ニプロ社補助人工心臓(Mサイズ)は,低流量でもLサイズのVASと比較して有効性,安全性に相違を認めず、小児の補助循環に有用であることが示された。今後,早期に薬事承認を得て臨床へ供給することを目指す。