[III-O-12] 単心室循環における冠動静脈瘻の発生頻度と原因に関する検討
キーワード:フォンタン循環, 冠動静脈瘻, 合併症
【背景】単心室循環の治療過程では体肺側副動脈や体静脈側副血行路等の血管新生がみられる。近年、他の側副血管の合併として冠動静脈瘻の発生例が報告されている(Catheter Cardiovasc Interv 2014;84:811-814)が、頻度および原因に関しては不明である。【目的】フォンタン術後に認められる冠動静脈瘻の頻度と原因に関して検討すること。【方法】1998年11月から2013年6月までに当院でフォンタン手術を施行した症例を対象として、術後評価の心臓カテーテル検査における冠動静脈瘻の頻度およびその原因について後方視的に検討した。【結果】フォンタン手術症例は23名、フォンタン到達年齢の中央値は1歳11ヵ月。評価時期はフォンタン術後2104日(中央値)で、23名中12名に冠動静脈瘻を認めた。全例でシャント量は少なく心収縮力の低下はなかった。冠動静脈瘻を認めた(CAVF)群/認めなかった(non-CAVF)群のフォンタン到達時期、肺動脈圧、心室拡張末期圧の中央値はそれぞれ2歳2ヵ月/1歳9ヵ月, 15mmHg/12mmHg, 8mmHg/7mmHgで両群間に差は認めなかった。フォンタン手術前後での肺血管拡張薬の使用はCAVF群/non-CAVF群でエンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、ベラプロスト、エポプロステノール、2剤以上の肺血管拡張薬併用例がそれぞれ10例/1例, 9例/1例, 12例/8例, 2例/0例, 9例/1例で、CAVF群では有意にエンドセリン受容体拮抗薬、PED5阻害薬および2剤以上の肺血管拡張薬の使用が多かった。【考察】フォンタン術後症例の約半数に冠動静脈瘻を認めた。これらは近年普及してきた肺血管拡張薬の使用例に多く認めた。今回の検討ではシャント量も少なく心収縮力低下は認めなかったが、心収縮力の低下を来す症例も報告されており、フォンタン術後において冠動静脈瘻は注意を要する合併症の一つと考えられる。【結論】フォンタン術後の遠隔期では特に肺血管拡張薬使用例において冠動静脈瘻が出現することがあり注意を要する。