[III-P-063] 心膜切開後症候群による心嚢液貯留の改善にトルバプタンが有効であった1乳児例
Keywords:トルバプタン, 心膜切開後症候群, 血清浸透圧
【背景】トルバプタン(サムスカ®)は腎集合管におけるバソプレシンV2受容体の選択的阻害薬であり、水利尿作用を示す。標準心不全治療と比較して胸水を早く改善させることが示されている。以前我々は乳児においてトルバプタン0.05~0.1mg/kg/日を分1から使用し、有効性と安全性を報告した。【症例】両大血管右室起始症の1ヵ月男児。Doubly committed typeのVSDで、高肺血流による心不全に対してトラセミド、スピロノラクタン、トリクロルメチアジドを投与、低酸素療法を併用し、日齢27に肺動脈絞扼術を実施した。術後経過は良好でCTRも術前66.3%であったが術後は55%に改善した。しかし術後15日目よりCTR 65%に心拡大、心エコーで3-5mmの心嚢液貯留を認めた。飲水量制限するも心嚢液は変わらず、心膜切開後症候群による心嚢液貯留と考えアスピリン 30mg/kg/日を開始した。その後も改善ないためにトルバプタン 0.1mg/kg/日 分1を併用開始した。0.2mg/kg/日まで増量した所、尿量増加しそれとともに心嚢液は減少し、0.3mg/kg/日まで増量し、最終的にトルバプタン開始23日目に消失を確認した。トルバプタンを継続したまま飲水量を増量しても再燃なく退院とした。血清Naの推移は135mEq→139mEqで高Na血症は認めなかった。【考察】トルバプタンにより水利尿を得ることができるため、血清Na濃度を低下させづらく血管内浸透圧を維持することができる。そのために血管内の水利尿後にサードスペースから体液を血管内に移動させやすく、心嚢液の改善に寄与したと考えた。既存の利尿薬が十分量投与されている状態でのサードスペースからの除水目的として、さらなるループ利尿薬増量の効果が期待しづらく低Na血症も危惧される場合に、トルバプタンは良い適応で安全に使用することができる。