[III-P-082] Fontan循環における心不全の指標としてのRDWの有用性
Keywords:RDW, Fontan循環, 心不全
【背景】赤血球サイズの不均一性を表す指標である赤血球粒度分布幅(Red blood cell Distribution Width, RDW)は、自動血球分析装置で簡単に測定でき、心不全や冠動脈疾患で上昇する事が知られている。一方、先天性心疾患においては、心不全の指標としてBNPが広く使用されている。しかし、Fontan循環はpreloadがかかりにくい病態である為、CVPが高くlow outputであってもBNPは上昇しにくい。目的】RDWが、BNPでは検出できないFontan循環の血行動態異常を検出でき、またBNPや他の指標との比較の中で、Fontan循環における心不全評価の独立した指標になりうるかを検討する。【方法】2010年08月から2014年12月までの期間に、当科で心臓カテーテル検査を行ったFontan術後患者37名について、循環動態を示すCVP、SvO2とRDWおよびBNPとの関連を検討した。また、RDWがFontan循環における独立した心不全の指標になりうるかを検討した。【結果】RDWとCVP、SvO2との関連において、RDWはCVPと有意な正の相関を示し(p<0.05)、SvO2と負の相関を示した(p<0.05)。また、RDWに影響を及ぼすとされる炎症、栄養状態、貧血の指標としてCRP、血清Alb、Hb、MCVを加えた解析では、RDWは独立した相関関係を示した。一方、BNPにおいては同様の相関関係は認められず、また内服薬の有無も結果に影響を与えなかった。【考察】Fontan術後患者において、循環不全を示唆するCVP高値、SvO2低値とRDWは良好な相関関係を示した。また、この関係は炎症、栄養、貧血などRDWに影響を及ぼしうる他の指標からも影響を受けなかった。BNPは心不全における有用なマーカーであるが、Fontan循環おいてはその精度に限界がある事が示唆された。一方RDWは、BNPでは検出しにくい循環動態の違いをより鋭敏に反映する独立したbiomarkerである可能性があり、またその簡便性と安価性から様々な循環動態の変化においても適用できる指標になりうると考えられた。