[III-P-104] 特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧患児4例の治療に関する後方視的検討
キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 初期治療, 多剤併用療法
【背景】小児期発症の特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)は、診断時に重症であることが多く、また重症例の病勢進行速度は速いため、診断後早期に3系統治療薬(プロスタサイクリン(PGI2)作動薬、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5-I))による治療介入が必要とされる。【目的】当科で過去5年間に治療を開始したIPAH/HPAH4例について、臨床症状、検査結果や治療内容の経過を後方視的に検討し、今後の理想的な治療戦略を考察する。【結果】男女比は3:1、診断時平均年齢は8.8歳、WHO機能分類3が3例、2が1例、診断時平均肺動脈圧74.6mmHg、収縮期肺体血圧比1.1、肺血管抵抗28.6単位・m2、BNP519.5pg/mlといずれも重症の肺高血圧症であった。初期治療はERA 1例(3ヶ月ごとに他の2系統も開始・増量)、PDE5-I + PGI2 2例、ERA + PDE5-I + PGI2 1例(以上3例は複数薬剤をほぼ同時期に開始・増量)。いずれの症例も治療開始1年あまりで内服薬の治療目標量に到達した。WHO機能分類、6分間歩行距離は全例で改善した。血行動態は、平均肺動脈圧は62.5mmHg、肺血管抵抗19.8単位・m2と改善傾向を認めた。また現時点でPGI2持続静注療法に移行したのは2例(いずれも治療開始1年あまりで導入)で、残りの2例も今後導入予定(このうち1例は、treprostinilの予定)である。【考察】今後の治療戦略として、肺動脈圧を可能な限り早期の低下を目指すことが重要と考える。このために、(1)自験例のように副作用なく導入可能であればupfront combination therapyを考慮(2)内服治療開始後、効果不十分ならPGI2静注療法の早期導入を考慮する。