[III-P-106] 成人期に肺動脈性肺高血圧症を発症した肝外性門脈閉塞症シャント術後の1例
Keywords:肺高血圧症, 肝外門脈閉塞, 門脈大循環シャント
【背景】門脈大循環シャント術後に発症する肺高血圧症が報告されている。【症例】25歳の女性。9才時に汎血球減少、脾腫から特発性肝外性門脈閉塞症の診断に至り、部分的脾動脈塞栓術を施行した。11才時、下血繰り返し自家総腸骨静脈グラフトによる上腸間膜静脈-IVCシャントを施行した。以後経過良好で、中高で運動制限なく、短大卒業後は定期受診を怠っていた。25歳時、検診異常を指摘され前医を受診、心カテで著明な肺動脈性肺高血圧 (PAH) が認められ、当科を紹介となった。尚、病歴の再精査により、近年2回の失神歴と、検診異常も5年前から存在していたことが判明した。入院時、NYHAII度。II音は亢進していた。血液検査ではBNP 47.3 pg/dl、NH3 110μg/dl。自己抗体や血栓素因は認められなかった。CXR上、CTR55%、肺門部肺動脈は拡大、心エコーでは右室拡大・壁肥厚があり、TRPG 97mmHgと上昇していた。CT、肺血流シンチ、呼吸機能検査から血栓塞栓症や呼吸器疾患による肺高血圧は否定的であった。心カテでは、平均肺動脈圧48mmHg、PVR 5WU、NO負荷はnon-responderであった。また肺動脈microbubbleテスト陰性で、門脈下大静脈シャント造影に狭窄はなかった。以上から本症例は、学童期に行われた先天性肝外性門脈閉塞症に対する門脈大循環シャントに関連する、成人期発症のPAHと診断した。PDEV阻害薬およびエンドセリン受容体拮抗薬を導入し退院した。特に薬剤性肝機能障害は出現せず、外来で増量を行っている。TRPGは減少傾向で、今後心カテを行う方針である。【考察】本症例は鑑別診断として、門脈圧亢進によるPAH、門脈大循環シャント後のPAH、肝肺症候群に合併するPAHなどが考えられた。【結語】稀であるが門脈大循環シャント後に発症するPAHに留意する必要がある。