第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-16 肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

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肺高血圧 まとめ

Sat. Jul 18, 2015 10:50 AM - 11:26 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:吉林 宗夫 (瀬田三愛小児科)

III-P-102~III-P-107

[III-P-107] 重症肺高血圧症を合併した成人期・先天性門脈欠損症の治療

小柳 喬幸, 小山 裕太郎, 吉田 祐, 住友 直文, 石崎 怜奈, 柴田 映道, 前田 潤, 福島 裕之, 山岸 敬幸 (慶應義塾大学医学部 小児科)

Keywords:先天性門脈欠損, 肺高血圧症, 門脈大静脈シャント

【背景】門脈―大循環シャント(Porto systemic shunt; 以下PSS)の治療として、肝内門脈が存在すればシャント閉鎖治療が第一選択で、先天性門脈欠損症では肝移植が考慮される。しかし、PSSに肺動脈性肺高血圧症(以下PAH)が合併した例では、肝移植を適応することは困難である。
【症例】22歳女性。6歳時に先天性門脈欠損症および門脈―下大静脈シャントと診断された。診断時に重症PAHを合併しており、肺血管拡張薬による内科的治療がおこなわれていた。PAHの進行を予防するためにシャント閉鎖術について検討する目的で、21歳時にPSS閉塞試験および肝外門脈造影が行われた。肝内門脈の存在が初めて確認され、先天性門脈欠損症から先天性門脈低形成と診断が変更された。門脈圧は8mmHg(閉塞前)から25mmHg(閉塞時)まで上昇し、過去の報告で閉鎖可能とされる30mmHgを下回った。シャント部位から肝臓への血管の描出が不明瞭だったため手術を選択し、門脈圧<20mmHgとなるように半閉鎖を実施した。術後早期に半閉鎖部に血栓を生じて完全閉鎖となり、一過性の門脈圧亢進症状を認めたが、徐々に肝内門脈の血流増加とともに改善し、術後1か月で退院した。
【考察】重症PAHを合併したPSSに対して、シャント閉鎖後に肺動脈圧が改善した報告例がある。腸管からのmesenteric flowが、腸肝循環を通らずに直接肺へ流れることがPAHの成因と考察され、PAH進行を抑制できる可能性がある。成人での治療例の報告は少ないが、今回PAHが進行してしまった症例でも、シャント閉鎖手術が可能であることが示された。
【結語】先天性門脈欠損症に重症PAHと診断され、肝移植適応外となった症例に、PSS閉鎖試験および肝外門脈造影を積極的に行い、低形成の肝内門脈を確認してシャント閉鎖手術を実施した。肝内門脈の詳細な再評価が、治療選択に有用であった。