[III-P-148] 内服治療が奏功した肺高血圧を伴う重症乳児僧帽弁閉鎖不全症の3例－当院で経験した乳児僧帽弁閉鎖不全症9例のまとめと共に－
キーワード：僧帽弁閉鎖不全症, 肺高血圧症, 僧帽弁逆流
【目的】乳児重症僧帽弁閉鎖不全症（MR）の原因は不明な点も多く、腱索断裂等による重症例では緊急手術が必要となるが、内科治療のみで改善した報告もある。今回内科治療が奏効した、肺高血圧（PH）を伴う乳児重症MR3例を経験したため、過去に当院で経験した乳児MR9例とともに報告する。【症例1】26日女児。前日より哺乳力低下、皮膚色不良を認め救急搬送。来院時ショック状態で乳酸アシドーシスと高NH3血症、低血糖を認めた。肺鬱血は軽度だが、MR II度、TR II度で等圧PHであった。ICUでの人工呼吸管理で、iNOおよび利尿剤で症状は1日で改善したが、投薬減量で再燃し調整を要した。経過からミトコンドリア病の可能性も考え、ビタミン剤も併用している。【症例2】2M男児。数日前より哺乳力低下、多呼吸、尿量減少、顔色不良を認め来院。IIp音の亢進、II度の収縮期＆拡張期雑音を聴取した。肺鬱血はなく、MR III度、TR III度、等圧PHであった。手術目的で転院したが、内科治療のみで軽快し、数年後に投薬を中止した。【症例3】8M男児。四肢の冷感、尿量低下、多汗を主訴に紹介受診。心尖部に3度の収縮期雑音を聴取した。CTR60％で中等度肺鬱血を認めた。MR III度、TR II-III度、中等度PHを認めた。手術目的で転院したが、内服治療のみで改善した。【考察】当院では1994年から20年間で、この3例を含め乳児MR9例を経験した。発症年齢は日齢26-11ヶ月（中央値4ヶ月）、発見契機はショック・プレショック3例、肺鬱血を伴う呼吸不全1例、心雑音のみ5例であった。呼吸不全の1例で弁置換を行い、心雑音の1例も内服治療中にMRが進行し、幼児期に弁形成を行った。PH合併の3例は全て重症例だが、内科治療が奏功し、手術例はない。経過観察1例で、残りは内服治療を要したが、4例は内服薬を中止できた。初発時に重症の乳児MRは、腱索断裂や弁形成不全のため緊急手術の適応も多いが、内科治療が奏功する一群があることを認識した。