[JJS-03] 川崎病成人例に対する冠動脈バイパス術
Keywords:川崎病, 冠動脈バイパス術, 内胸動脈
【背景】川崎病成人例における冠血行再建術の適応は明らかでない。川崎病発症後5年以上が経過した冠動脈瘤は高度石灰化を伴うことが知られており、一般的なPCIのテクニックは適用されずロータブレータを用いた治療が中心となる。また低左心機能例、多枝病変、入口部病変、病変長が長い場合などは原則的にPCI適応外であるため、CABGが担う役割は大きい。【目的】川崎病冠動脈疾患における冠血行再建術は、長期開存性が証明されているITAの使用が大原則である。当院では、(1)ITAをLADに吻合する、(2)可及的に両側ITAを使用する、(3)静脈グラフトを使用しない、以上の方針に従っている。当院における治療方針の妥当性を検討した。【対象と方法】1991年から2014年までに川崎病の既往を有する41症例に対してCABGを施行したが、20歳以上の成人7症例について検討した。手術時年齢は20-37歳(平均29.3±5.3歳)。LMT病変の1例を除いた6例すべてがCTO病変(LAD:5例、RCA:5例)であり、4例にLCxの狭窄病変を認めた。2例にLADに対するローターブレータが施行されていた(1例は開存、1例は再狭窄)。平均吻合枝数は2.4±0.5枝。使用グラフトは、LITA:6、RITA:7、GEA:1、SV:0であり、LADに病変を認めなかった1例でLITAを温存、RITAは3例においてフリーグラフトとして使用した。【結果】手術死亡なし。術後観察期間4年~21年(平均10.0±5.4年)において遠隔期死亡、心事故ともになく、全症例がNYHA:Iで経過している。すべてのグラフト開存を確認している。【結語】川崎病若年成人に対して動脈グラフトのみを使用したCABGを施行し良好な結果を得た。若年成人における川崎病冠動脈病変はCTO病変が多くPCIが困難な症例も多い。LITA-LAD graftingを中心とした両側ITAを用いた血行再建が重要である。